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» 2019年12月26日 07時00分 公開

本格的なマルチクラウドの時代は到来するのか? 人気が出そうなSaaSは? 2020年のクラウド業界動向を占う (1/3)

2019年は各ベンダーが、マルチクラウド向けのサービスを多くリリースした。20年はこの流れがさらに加速し、企業が複数のクラウドを使いこなすようになるのか。本記事では、19年にクラウド業界で起きたトピックを振り返りつつ、20年の業界動向を予測していきたい。

[谷川耕一,ITmedia]

 2019年のIT業界を振り返ると、AIが話題になったのはもちろんのこと、ハイブリッドクラウド、マルチクラウド、コンテナ、Kubernetesといった技術やサービスも負けず劣らず注目を集めた。

 特にマルチクラウドについては、Amazon Web Services(AWS)をはじめとするクラウドサービスで大きな障害が発生するたびに、「ユーザー企業は1つのクラウドに依存するのではなく、マルチクラウドにしておくべきだ」という議論が巻き起こった。

 20年はこの流れがさらに加速し、企業がAWSやGoogle Cloud Platform(GCP)、Microsoft Azure(Azure)などを同時に使いこなす“マルチクラウドの時代”がやって来るのだろうか――。

 本記事では、19年にクラウド業界で起きたトピックを振り返りつつ、20年の業界動向を予測していきたい。

photo 19年は米Googleが「Anthos」を発表し、話題を呼んだ(=米Googleの公式ブログより)

VMware対Red Hatの競合関係はさらに激化

VMwareは大手ベンダーとの連携を強化しつつ、コンテナ回りの製品ラインアップを強化

 コンテナベースのプラットフォームの話題としては、19年8月に、米VMwareが同じDell Technologiesグループの米Pivotalの買収を発表したことが記憶に新しい。Pivotalはクラウドネイティブ・プラットフォームとその上で活用できる開発ツールなどを提供するベンダーだ。

 VMwareではこの買収と時期を同じくしてKubernetesをサーバ仮想化ソフトウェアのvSphereと統合する「Project Pacific」、Kubernetesアプリケーションのビルド、配布、運用などを支援してアジャイル開発とDevOpsを容易にする「Project Tanzu」を発表し、コンテナ回りの製品ラインアップを強化した。

 VMwareはこれまで仮想化技術でオンプレミス/プライベートクラウドのITインフラ領域で存在感を示してきた。クラウドの時代に入ると、まずは自社サービス「VMware Cloud」を提供し、追って大手ベンダーとの協業・連携を相次いで発表するなど、柔軟な方針を採用している。

photo 米VMware上席副社長のレイ・オファレル氏

 16年には米IBMと戦略的提携を締結し、「IBM Cloud」と連携した製品を発表。17年にはAWSと組み、「VMware Cloud on AWS」をローンチした。19年もこの流れを継続し、5月には米Microsoftと組んでAzureと連携することを明らかにした。

 VMware Cloudを活用すると、既存のオンプレミスやプライベートクラウドで動いているアプリケーションをそのままパブリッククラウド環境に移行する「クラウドリフト」が容易になる。特に日本国内では、既存システムの本格的なクラウド化は始まったばかりなので、“2025年の崖”を乗り越える最初のステップとして、20年以降はVMware Cloudを利用したクラウドリフトは盛んに行われるだろう。

 とはいえクラウドリフトだけでは、クラウドが本来持っている俊敏性や柔軟性を十分に発揮できない。メリットを得るにはリフトからシフト、つまりはアプリケーションをクラウドネイティブ化する必要がある。ここでいうクラウドネイティブ化とは、クラウドコンピューティングのメリットを最大限に活用できるよう、アプリケーションをマイクロサービス化したり、サーバレス技術などでモダンなアーキテクチャへと作り替えたりすることだ。

ブレずに「オープン・ハイブリッドクラウド」戦略を進めるRed Hat

 そのクラウドネイティブ化に大きく貢献するのが、コンテナ技術だ。この領域でリードするのは、米Red Hat。同社は19年7月末に米IBMによる買収が完了した後も、「Red Hat OpenShift」(以下、OpenShift)のシェアを伸ばし、物理環境、仮想化環境、プライベートクラウド、パブリッククラウドを問わず、あらゆる環境でコンテナベースのアプリケーションを動かせるようにする「オープン・ハイブリッドクラウド」戦略を推進し続けている。

photo レッドハットの望月弘一社長(左端)、金古毅執行役員(右端)とパートナー企業の面々

 OpenShiftは、コンテナ化アプリケーションの開発、配布、運用を支援するKubernetesベースのプラットフォームで、特にエンタープライズ企業からの指示が根強い。この領域に、Pivotalの買収、コンテナ回りのラインアップ強化、Azureとの連携を果たしたVMwareが参入し、勝負を挑んでくるわけだ。

 そのため20年以降は、Kubernetesベースのコンテナ環境では、Red HatとVMwareの競合関係が激化しそうだ。OpenShiftは既に市場での実績がある点に大きな優位性がある。一方でVMwareは、仮想化環境のクラウド化に実績がある。鍵を握るのは、両社がパブリッククラウド・ベンダーとどう連携・協業するかだろう。両社の製品採用とパブリッククラウドとの相性が、協業先を選ぶ基準の1つとなりそうだ。

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