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アコースティックな響きをありのままに ハイレゾストリーミングで彩り豊かなリスニング体験をしてみた(2/3 ページ)

» 2019年12月26日 09時00分 公開
[山崎潤一郎ITmedia]

排他モードで機器の性能を活用する

 一方のmora qualitasは、月額1980円(税別)での利用が可能。こちらは従来型のハイレゾ音源のダウンロードサービスmoraとは別もの。ただし、従来からのmoraユーザーのために「mora連携」という機能を備えている。これは、moraでダウンロード済み楽曲がmora qualitasで配信されている場合、自動でお気に入りに登録される、というものだ。

 音源スペックは、16ビット/44.1KHz〜24bit/96KHzのロスレスでの配信だ。ロスレス配信ということで、PCMのハイレゾが基本のAmazon Music HDと比較すると見劣りするようだが、聴覚上は、区別がつなかないので問題はない。それよりも、mora qualitasのプレイヤーには、「排他モード」という音質こだわり派にはうれしい機能が存在する。

photo mora qualitasのmacOS版プレイヤーソフト。「排他モード」を選ぶと、音源スペックの右に「EXCLUSIVE」と表示され、ソフト側で最適な周波数に設定してくれる

 排他モードは、OS標準のオーディオエンジン(macOSの「CoreAudio」など)のスペック切り替えをソフト側から制御可能にする機能だ。言い換えると、サンプリング周波数が異なる楽曲を連続再生する場合に、ソフト側で最適な周波数に自動変更してくれるのだ。

 例えば、排他モードを備えていないmacOSの「iTunes」で、44.1KHzの次に96KHzの音源を続けて再生しても、再生エンジンの設定を自動で96KHzには変更してくれない。「Audio MIDI設定」を開いて手動で変更する必要がある。

 排他モードを搭載したソフトはこれをソフト側で切り替えてくれる。常に音源のスペックに適したオーディオ設定で聴くことができるというわけだ。以前から他社製ハイレゾ再生ソフトには普通に搭載されているだけにハイレゾマニアにはうれしい機能だ。

 ただ、排他モードでの再生は、一部のユーザーに残念な結果をもたらす可能性もある。サードパーティー製の外付けオーディオインタフェースを利用している場合、サンプリング周波数の異なる音源が混在したプレイリストを再生する状況で、曲間に「プツッ」というノイズが乗ってしまう場合があるからだ。周波数の切り替え時にノイズが生じるようだ。デバイスドライバの作りが関係してるのだろうか。いずれにしても、ハイレゾで気持ちよく聴いているときにこのノイズが入ると興ざめすることは確かだ。

レコメンド機能は、まだまだこれからか

 ストリーミング配信のサービスにとって、重視したいポイントは、未知の楽曲との出会いを演出してくれるレコメンド機能であろう。Amazon Music HDは、まずまずといった印象。ただ、ストリーミングの老舗であるSpotifyの秀逸なレコメンドを日々経験しているだけに、思いがけない未知の曲との出会いという意味では負けている部分もある。

 というのは、Spotifyの場合、自作プレイリストを作成すると「こんな曲もいかがですか」といった感じで、レコメンド楽曲のリストが、プレイリストに追加される形で、下部に連なって表示される。この選曲が実に的を射ている。自作プレイリストの再生が終了しても、自動的にレコメンド曲が継続再生されるので、思わぬ出会いがあるのだ。Spotifyの場合、サービスとしての歴史が長いだけに、そのあたりの機能はまだまだ他の追随を許さない。

photo 自作プレイリストの楽曲を学習して楽曲を提案してくれるSpotifyの秀逸なレコメンド機能。筆者のお気に入りの機能だ。Amazon Music HDやmora qualitasも早く追い付いてほしい

 一方の、mora qualitasは、この原稿を書いている時点では、いまだメジャータイトルのみのテスト運用の段階なので、けっこうありきたりの選曲か、あるいは、「いくら何でもそれは聴かないよね」といったとっぴな楽曲が表示されたりする。こちらも、Spotifyの秀逸なレコメンドに慣れていると残念感が漂う。まあ、レコメンド選曲についての感想は、属人的要素が強く、個々で使ってみてナンボの世界だけに、これ以上、突っ込むのはやめておこう。ただ、mora qualitasの場合、今後インディーやマイナーレーベルなどの楽曲が登場する通常運用がスタートした時点で、改めて評価する必要はあるだろう。

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