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» 2020年01月07日 07時00分 公開

「ダークアド」と私たちの個人情報の行方 (1/2)

私たちの個人情報は、ネット上でどのように扱われているのか。Facebookの例などを基に考える。

[安藤類央,ITmedia]

 皆さんは「ダークアド」(Dark Advertising)を知っていますか。特定の性質を持つ人やグループをターゲットにして、政治的な扇動をする広告のことです。私たちがネット上で示した興味、関心に関するデータを収集してマーケティングに活用する「マイクロターゲティング」も、選挙活動などに利用されるとダークアドになります。

 私たちが普段使っているSNSのデータは、どのように利用されているのでしょうか。2016年の米大統領選でドナルド・トランプ陣営のキャンペーンを担ったとされる、データ解析企業の英Cambridge Analytica(CA)の例を紹介していきます。

診断アプリでユーザーの性格を分析

 「Facebook」は、全世界で月間20億人以上のユーザーが利用しています。米Facebookが2019年10月に発表した7〜9月期の決算によると、DAU(日間アクティブユーザー数)は16万人を超えています。

 同社は、膨大なユーザーのデータを収集し、広告表示などに利用しています。例えば、あなたが登録している住所や性別、勤務先などのプロフィールや、特定のページへの「いいね!」などの行動を基に、あなたの興味・関心に合いそうな広告を表示しています。

 そんなFacebookユーザーの個人情報が、16年の米大統領選でトランプ陣営に不正に利用されたとして話題になったのは、皆さんもご存じかと思います。サードパーティー製の診断アプリで収集された個人情報を不正に購入し、選挙のために流用したとされている企業が、CAです。英メディアの覆面取材記事などによると、自社製アプリでも個人情報を収集していたとみられています。

 同社が利用したとされるのは、性格診断アプリです。アプリ上でクイズを出題してさまざまな情報を引き出し、そのユーザーの性格を浮かび上がらせていきました。そこでターゲットとなる有権者を抽出し、集中的に広告を投下していったのです。

 CA親会社のStrategic Communication Laboratoriesは、データ分析やそれを用いた戦略を得意としており、CAも当初はビッグデータを駆使して共和党を技術的に支援しようと考えていたようです。

 世論調査の専門家であるフランク・ルンツ氏は、「もはや専門家はCambridge Analyticaを置いて他にいない。彼らは勝利の方法を導き出したトランプ・チームの一員なのだ」と話しています。

 この指摘から、CAの人格分析がいかに選挙戦に影響を与えたかがうかがえます。

 同社のようなデータ分析企業が使っている主成分分析などの手法自体は、1980年代から使われています。しかし、昔と今では取得できるデータの量や、膨大なデータを分析するためのマシンリソースの事情が異なります。

 Facebook上のデータだけでも膨大なのに、今ではTwitterのつぶやき、オンラインの世論調査、ECサイトの購買データなど、私たちを取り巻くデータは個人でも把握しきれない量になっています。一つ一つの行動は情報のかけらに過ぎないかもしれませんが、これらの個人データを大量に蓄積することによって得られる分析結果は、非常に信頼性の高いものになっています。

 SNSを使っていて、「何でこの広告が表示されるのだろう?」「何でこの人が友だちの候補として挙がってくるのだろう?」と不思議に思ったことは1度や2度ではないはずです。

 トランプ大統領が当選したときに、「アテンション・エコノミー」という言葉を使ったメディアもありました。これは文字通り、人々の関心や注目の度合いが経済的な価値を持つという考え方です。世の中が情報であふれかえる中で、いかに人々の注目を集めるかにいろんなプレイヤーが四苦八苦しています。「データが新しい石油だ」といわれるのは、こうした背景もあるのです。

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