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Kubernetesの登場後、コンテナ型仮想化はどう発展した? 技術トレンドの変遷を振り返る(4/5 ページ)

» 2020年01月07日 07時00分 公開
[新野淳一ITmedia]

分散アプリケーション開発環境も整備へ

 Kubernetesが事実上の標準となったことは、分散アプリケーションのためのインフラ環境の安定も意味します。

 これにより、今後ニーズが高まるであろう分散アプリケーションの開発環境においても動きがありました。

 2017年5月。分散環境におけるサービス間の通信やセキュリティ、運用管理などを容易にする「サービスメッシュ」を提供するためのフレームワーク「Istio」がオープンソースで公開されました。

 2018年6月にはIstioは1.0に到達します。

 Istioはいまのところサービスメッシュを提供するフレームワークでもっとも知名度の高いものですが、2019年5月には、アプリケーションからサービスメッシュを呼び出すAPIなどを標準化しようとする動きがありました。

 現在もサービスメッシュにはIstio以外の選択肢がいくつも存在していますが、標準化されたAPIの普及によってより多くの選択肢が登場してくるかもしれません。

Kubernetesによるマルチクラウドへの期待

 2018年8月に「Cloud Service Platform」という名称で発表され、2019年4月に「Anthos」と改名されたGoogleの新サービスは、Kubernetesによるインフラの抽象化をハイブリッドクラウドやマルチクラウドの実現に使うというアプローチで登場しました。

Anthosは、Google Cloud上ではGoogle Kubernetes Engine(GKE)を基盤として稼働し、オンプレミスではVMware環境上に構成されたGKE on Prem上で稼働。さらにAWSなどほかのクラウドでも実行可能だと紹介されています。

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 Anthosに対応したアプリケーションであれば、オンプレミス、Google Cloud、それ以外のクラウドのどこでも実行可能となります。

 Googleのハイブリッドクラウド/マルチクラウド戦略の要となるのが、Kubernetesを核とするこのAnthosなのです。

 Heptio、Pivotalと相次いでKubernetesに強い企業を買収することでKubernetesへの注力を示してきたVMwareも、2019年8月に発表したTanzuによってKubernetesを中心としたマルチクラウド、ハイブリッドクラウドの実現をもくろんでいます。

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 VMwareは仮想化ハイパーバイザーであるvSphereをオンプレミスやさまざまなクラウドで稼働させることで、VMware環境で統一したマルチクラウド/ハイブリッドクラウドの実現を戦略の柱としてきました。

 この方向性は現在も変わらないものの、それに加えてあらゆるデータセンター、クラウド、エッジでKubernetesを稼働させ、統一したアプリケーションの実行環境、運用環境をKubernetesのレイヤーで実現しようとしているのがTanzuの目指すところです。

 Red Hatを買収したIBMも、ハイブリッドクラウド戦略においてはKubernetesを基盤としたOpenShiftを重要なソフトウェアとして位置付けています。オンプレミスではOpenShiftを、IBM CloudではOpenShift on IBM Cloudを展開し、共通したソフトウェア基盤を提供するのです。

 Kubernetesはコンピューティングの主要な3要素であるコンピュート、ネットワーク、ストレージのいずれも抽象化し、下位レイヤーを隠蔽することが可能です(一方で、可用性のために離れたコンテナへ分散させるといった、下位レイヤーを意識させることも可能です)。

 複数のクラウドを用いるハイブリッドクラウド環境やマルチクラウド環境が当たり前になっていくと予想される中で、このKubernetesによるインフラ抽象化を用いたマルチクラウド/ハイブリッドクラウドのソリューションは今後もさまざまなベンダーから提供されるでしょう。

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