アップルの「AirPods Pro」を筆頭に、本体に内蔵したマイクで外の環境音を取り込む「外音取り込み機能」を搭載したイヤフォンやヘッドフォンが増えています。ノイズキャンセリング機能まで使って外部ノイズを排除しているのに、わざわざ外音を取り込むのはなぜでしょう。その理由を説明します。
アウトドアで楽しむ音楽リスニングは、電車の走行音や人の話し声など周辺環境に由来するノイズに邪魔されがちです。ヘッドフォンを密閉構造にしたり、フィット感の高いイヤーパッドやイヤーピースを装着したりすれば騒音をシャットアウトして音漏れも防げますが、今度は周囲の音が聞こえづらくなり、安心して外を歩けません。そこで、ヘッドフォンやイヤフォンを装着したまま本体に内蔵するマイクで外の音を拾う機能が生まれました。外でも安全に音楽を楽しめます。
機能の呼び名は、メーカーによって「外音取り込み」だったり、「ヒアスルー」だったり、「トランスペアレンシー(透過)」だったりとさまざま。アウトドアをジョギングしながらワイヤレスイヤフォンで音楽を聞くユーザーが多いといわれている米国のブランドにも外音取り込み機能を搭載する製品が多くあります。
外音の取り込み方も製品によって異なり、大きく3つのパターンがあります。
一つはAirPods Proと同じように、音楽のボリュームはそのままに外音が聞けるパターンです。AirPods Proの場合、「外部音取り込み」という機能をオンにすると、もう一つの看板機能であるアクティブ・ノイズキャンセリングが排他的にオフになります。すると、まるでイヤフォンを装着していないように、再生中の音楽とミックスされてクリアに外の音が聞こえてきます。イヤフォンによってはマイクの集音性能が強すぎたり、ノイズが乗って外音が聞こえづらくなるものもあるので、AirPods Proの機能の完成度はとても高いレベルにあると思います。
次に、外音を取り込んでいる時は音楽のボリュームをグンと下げるパターンがあります。安全を第一に考えれば理にかなっているのですが、ヘッドフォンやイヤフォンは音楽を聞くためのツールであることを考えると、このパターンを採用するメーカーは、お店のレジなど「一時的に外の音を取り込む」というユースケースを想定しているのかもしれません。ちなみにソニーの完全ワイヤレスイヤフォンは、音楽と外音をミックスするモードと、本体のボタンを押している間だけ外音を一時的に取り込む「クイックアテンション」機能の両方を搭載しています。
そして三つ目は、本体に電気的な仕掛けを設けず、ハウジングやノズル、イヤーピースなどに小さな穴を開けて外の音を取り込むパターンです。いわゆる「オープン型」の本体構造を持つワイヤレスイヤフォン。その代表例がアップルの「AirPods」です。本体がとても軽く、クリアでキレのあるサウンドが楽しめることがオープン型の特長ですが、一方では常に外の音が漏れ聞こえ、再生音量によっては音楽が音漏れするといった構造的な弱点もあります。
外音取り込みはスポーツタイプのワイヤレスイヤフォンにとって必須といえる機能です。屋外のランニングコースを走ったり、ジムでトレーニングをする場面では外の音が聞こえてくる方が安心して体を動かせます。スポーツシーンにも最適なワイヤレスイヤフォンを探す場合は、本体が防滴・耐汗仕様であることに加え、外音取り込み機能にも注目しましょう。
自分の耳型に合わせて作ったカスタムイヤフォンをお持ちの方には、愛機のケーブルを交換する感覚で完全ワイヤレスイヤフォン化できるフォステクスの「TM2」を紹介したいと思います。高い遮音性を持つカスタムイヤフォンですが、TM2にも外音取り込み機能が搭載されているので、カスタムイヤフォンを装着したまま外の音を聞くという画期的な使い方ができます。
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