米国ラスベガスで開催されているエレクトロニクスショー「CES 2020」で、パナソニックがHDR対応のVRコンテンツが見られる眼鏡型ウェアラブルデバイスを参考展示している。実際に試用し、VR体験の質は画質に大きく左右されることを再確認した。
パナソニックがCESにVR対応のヘッドマウントディスプレイを出展したのは2017年以来。当時は視野角220度のワイドアングルビューによる没入感を掲げていたが、今回の試作機では4Kを超える高精細で、ダイナミックレンジも広げて“画質真っ向勝負”を挑んだ。
外観は眼鏡に近づけ、さらに映像に没入できるようにレンズの周囲をシールドで覆っている。テンプルにスピーカーやバッテリーは内蔵されておらず、本体の質量は最終製品ではないため公開されていないがとても軽い。試作機はイヤフォンを装着して音を聞くスタイルになっている。
超小型の有機ELパネルは、VRデバイス向けのコンポーネント開発に実績を持つ米Kopinとパナソニックが共同開発した。3Mを加えた3社で共同開発した光学モジュールとの組み合わせにより、ゆがみのない立体表示を実現している。
CESの会場で試作機のVR映像を視聴した。コンテンツはネイティブ8Kで、HDR対応の映像ソースをPCでフォーマット変換した後、USB Type-C経由で入力している。
目の前に広がる映像は画素の粗密がほとんど分からない。鮮やかな色彩、自然なコントラスト感が掛け値なしの「のめり込めるVR空間」を作り出した。映像については、これまでのVRヘッドセットとはケタ違いにリアルであり、まるで8K/4Kテレビのパネルに顔を近づけて映像を見ているような感覚だった。
今回の試作機はサウンドをテクニクスの技術を注入したイヤフォンで聞く仕様だった。磁性流体を使ったドライバー(スピーカー)を搭載するカナル型イヤフォンは軽量で、負担を感じることはない。それだけコンテンツへの没入感も高まる。
パナソニックとしては、今後も画質を徹底的に追求したVRヘッドマウントディスプレイとしてブラッシュアップしていく考え。PCやスマホとの接続を必要とするか、あるいはストレージを内蔵するスタンドアロンタイプにするかなど、デザインも含めた各部の設計仕様については、今回の出展から得た成果もフィードバックして検討していくという。
VR/AR関連のエンターテインメントは、5Gの高速通信サービスの魅力を一般に広めるためのけん引役にもなるといわれているが、画質が良くなければすぐに飽きられるだろう。VRエンターテインメントも「高画質」という基本に立ち返ることの大切さを、パナソニックの展示を通して理解した。
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