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» 2020年01月16日 07時00分 公開

なぜ、トヨタは「実験都市」をつくるのか? その狙いと勝算を考える (3/3)

[小林啓倫,ITmedia]
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トヨタの勝算はあるか

 もちろんトヨタはGoogleや中国のIT大手と直接的に競合しているわけではない。しかし「未来都市」という商品、より具体的にいえば、そのためのプラットフォームやビジネスモデルを開発する競争という文脈では、彼らがライバルとして立ちふさがることになるだろう。実験都市という試みにおいても、前述のように他社が先行している状況がある中で、トヨタのWoven Cityに勝算はあるのだろうか。

 トヨタにとって一つの強みは、やはりモビリティになるだろう。ライバルたちがIT分野から登場したプレイヤーであるのに対し、同社は長年モビリティの分野で知識と経験を積み重ねてきた。そしていくらデジタル技術が発達したとはいえ、「移動」という行為を安全・確実に行うためには物理空間での対応が欠かせない。未来の都市におけるモビリティがどのような姿であるべきか、正解を出すのに最も近い位置にいるのはトヨタであるはずだ。

 一方で懸念もある。まず今回の「都市ではなかった場所にゼロから都市をつくる」というアプローチは、理想的な答えを短期間で描くのには最適といえるものの、現実に直面する問題を先送りしている面もある。逆にGoogleがトロントで直面した住民からの抗議活動は、彼らにとっては苦い経験かもしれないが、同じコンセプトを他の都市で展開する際のノウハウを積んだといえるだろう。トヨタの場合、東富士工場跡地という場所でWoven Cityの建設・運用に成功したとしても、それがまさに「ショーケース」で終わってしまうという懸念が払しょくされるわけではない。

 Alibabaがクアラルンプールへ「シティブレイン」を輸出したように、実験都市で開発されたプラットフォームが、まさに都市の単位で販売されていくというのが理想だろう。Alibabaはクアラルンプール以外の都市への展開に向けても活動しており、Googleも世界各国の都市で交渉を進めている。ライバルは実験を実験で終わらせず、それと並行して売り込みや展開の努力も行っているわけだ。

 Woven Cityも、将来の売り込みに向けた取り組みを今から始める必要があるだろう。そのためにも、なるべく早い段階で、外部の人々を巻き込んで知見を取り入れることが望ましい。道路やテクノロジーだけでなく、さまざまな人の思いやアイデアが「織り込まれた」街こそ、世界中の人々にとって魅力的な都市の姿となるはずだ。

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