なぜ、トヨタは「実験都市」をつくるのか? その狙いと勝算を考える(3/3 ページ)
トヨタの勝算はあるか
もちろんトヨタはGoogleや中国のIT大手と直接的に競合しているわけではない。しかし「未来都市」という商品、より具体的にいえば、そのためのプラットフォームやビジネスモデルを開発する競争という文脈では、彼らがライバルとして立ちふさがることになるだろう。実験都市という試みにおいても、前述のように他社が先行している状況がある中で、トヨタのWoven Cityに勝算はあるのだろうか。
トヨタにとって一つの強みは、やはりモビリティになるだろう。ライバルたちがIT分野から登場したプレイヤーであるのに対し、同社は長年モビリティの分野で知識と経験を積み重ねてきた。そしていくらデジタル技術が発達したとはいえ、「移動」という行為を安全・確実に行うためには物理空間での対応が欠かせない。未来の都市におけるモビリティがどのような姿であるべきか、正解を出すのに最も近い位置にいるのはトヨタであるはずだ。
一方で懸念もある。まず今回の「都市ではなかった場所にゼロから都市をつくる」というアプローチは、理想的な答えを短期間で描くのには最適といえるものの、現実に直面する問題を先送りしている面もある。逆にGoogleがトロントで直面した住民からの抗議活動は、彼らにとっては苦い経験かもしれないが、同じコンセプトを他の都市で展開する際のノウハウを積んだといえるだろう。トヨタの場合、東富士工場跡地という場所でWoven Cityの建設・運用に成功したとしても、それがまさに「ショーケース」で終わってしまうという懸念が払しょくされるわけではない。
Alibabaがクアラルンプールへ「シティブレイン」を輸出したように、実験都市で開発されたプラットフォームが、まさに都市の単位で販売されていくというのが理想だろう。Alibabaはクアラルンプール以外の都市への展開に向けても活動しており、Googleも世界各国の都市で交渉を進めている。ライバルは実験を実験で終わらせず、それと並行して売り込みや展開の努力も行っているわけだ。
Woven Cityも、将来の売り込みに向けた取り組みを今から始める必要があるだろう。そのためにも、なるべく早い段階で、外部の人々を巻き込んで知見を取り入れることが望ましい。道路やテクノロジーだけでなく、さまざまな人の思いやアイデアが「織り込まれた」街こそ、世界中の人々にとって魅力的な都市の姿となるはずだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
ITmedia NEWSに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
SpecialPR
本日の新着記事
アクセスランキング
-
1
メルカリ、梨の転売疑惑に「盗品の出品は確認されず」 誹謗中傷には利用制限も
-
2
Anthropic、「Claude Opus 5」公開 Fable 5に迫る性能を半額で――サイバー安全策は緩和、拒否時は自動フォールバックも
-
3
「iPhone高騰」はこれからも続く? 中国CXMTに近づくApple、メモリ競合へのけん制が不発に終わりそうなワケ【後編】
-
4
「ニューロマンサー」実写ドラマ、Apple TV+で2027年1月配信開始へ
-
5
「こんなのに追われたら……」急斜面もやすやす爆走、中国製の車輪付き四足ロボのデモ動画が話題 最高時速20km超
-
6
検索結果に「詐欺ではありません」と表示させる詐欺手口、警視庁が注意喚起 AI要約も餌食に
-
7
海外の新作バカゲー「電車アタック」にマンガ家が感心した理由 ブッ飛んだ内容と完成度の高さ、そして“日本”
-
8
「めっちゃカメレオン」公式Discord乗っ取り 担当者PCがマルウェア感染、管理者が全員BANに 現在は復旧
-
9
暑さ対策が熱い! 「猛暑対策展」で感じた、転んでもただでは起き上がらない日本人のエネルギー
-
10
スーパーに並んだ「ごちゃごちゃ生成AIポップ」が物議 “看板王”こと、きぬた歯科院長「これはアリ」
ITmedia NEWS SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
ITmediaNEWSをフォロー
あなたにおすすめの記事PR