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取材写真整理の変遷を語る(2/3 ページ)

» 2020年01月30日 08時00分 公開
[西田宗千佳ITmedia]

実は「シンプルなこと」しか求めていない

 筆者にとって、写真管理に求める機能は比較的シンプルだ。

 まず、大掛かりな(それこそPhotoshopのような)編集機能はいらない。切り抜きと傾き補正、色補正ができれば十分だ。むしろ、それ以上の加工は、報道向け写真ではすべきでない。

 写真はRAW形式では扱わない。これは単に、容量の削減と「書き出しにかかる時間の短縮」が目的。RAW形式で持っている方がいろんなことができるのはよく分かっているが、記事を出稿するまでは時間との勝負。自分が楽をするためにも、PCなどへのファイル転送の時間を短くすること、その後の処理時間が短くなることが重要だ。

 というわけで、撮影はJPEGで行い、管理ソフトに取り込んだ後、使えるカットだけに最小限の加工をして、サッと「出稿用画像」にしてフォルダにまとめ、原稿を書いてキャプションをつけてZIPで固めて入稿……ということになる。

 すでに述べたように毎回1つの取材で2000枚くらいの写真を扱うので、使える写真をサクサク探して必要な処理だけを行うソリューションが望ましいわけだ。

スマホ時代になって「クラウド」が重要に

 実のところ、Picasaの時代にも、Apertureの時代にも、完全に満足していたとはいえない。Apertureの時代にはたいていのことができたとはいえ、最終的なデータバックアップの面倒くささと、機能面での不足(必要な時は結局Photoshopの出番だ)に困っていた。

 そして、2014年。Apertureも開発終了の時がやってくる。

 この時筆者は、移行先としてAdobeの「Lightroom」を有望視し、使ってもみた。だが、結果的に選んだのは意外なソフトだった。

 それはAppleの「写真」。iOSやmacOSに標準でついてくるアレだ。

 標準ソフト、ということで軽く見られているが、「写真」はなかなか機能が高い。色調補正や角度補正は十分にできたし、作業もシンプルだ。Photoshopの出番は「モザイクをかけるときだけ」になった。

 何より大きいのは、2015・16年頃から、スマートフォンで撮影した写真をそのまま使う場面も増えてきたことだ。壇上の講演者を200ミリで狙う場合を除くと、大きなカメラを持ち出す必要は減ってきた。「写真」アプリを使うならiPhoneからの転送はiCloud任せでいいし、PCでなくiPadでも作業が進められた。これは「写真を横で見つつ、原稿はPC(Mac)で書く」には便利なやり方だった。

 撮影した写真は「写真」アプリへ取り込み、その後、ファイルだけは別途PCに保管。作業は全部「写真」アプリで済ませて、バックアップはiCloudへ。あとは帰国時などに、PC内に保存してある「元データ」をNASへコピーして終了だ。「写真」アプリへの移行は2015年に行っており、その頃以降の写真は、あらゆるものがクラウド側にある。元ファイルは、よほどのことがない限り取り出す必要はない。

 ちなみに、Androidで撮影した写真はGoogle Photoに自動アップロードされるようになっている。こちらが必要な時はGoogle Photoにアクセスし、元ファイルをダウンロードして使う。

現在はLightroomへ本格移行

 とはいうものの、2018年、再度別のソリューションへと移行した。2017年に登場した「Lightroom CC」だ。

 「写真」アプリの欠点は、結果的に機能の不足にある。あまりいじらないとはいえ、色調補正の幅はもっと広い方がやりやすい。できれば「自動」化されていた方がいい。

 Lightroom CCは、そのニーズを満たしてくれた。いろいろ細かく調整できるのはもちろんだが、何より「自動化」されているのがいい。色調補正も傾き補正も、基本ワンクリック。もちろんそのままでいけるわけではなく、特に色調は再度修正したい時も多いのだが、一から全部やるよりずっと楽だ。

 データはAdobeのクラウドであるCreative Cloudへバックアップしている。iPhone・iPadでのデータはiCloudに、AndroidのデータはGoogle Photoにもアップロードされるが、スマホ内にLightroom CCを入れておくと「スマホの写真ライブラリから自動的にLightroomへ読み込む」機能があるので、結局、写真は自動的にCreative Cloudへ集まるようになった。

 通信量は増大する、という欠点があるのだけれど、ぶっちゃけバックアップのことを「何も考えなくていい」のはありがたい。まあ、撮影データは結局NASにコピーしているが、本当にそれだけだ。

 今は、Photoshopを立ち上げるのは月に一度もない。ただ「モザイクをかけるとき」か、ちゃんと「合成を使った画像を作らねばならないとき」くらいだ。ちょっとしたモザイクなら、むしろスマホアプリでやってしまった方が、今どきは素早かったりする。

 というわけで、筆者のひどい腕の写真が多少マシにみえて、記事で使えているのは、Lightroomのおかげである。AdobeがLightroomやCreative Cloudを止めるのは、同社のビジネスが本格的にヤバくなった時だけだろうから、当面、このやり方で安心ではある。

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