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» 2020年01月30日 07時00分 公開

国会中継を見て「デジタル遺品」の専門家が身構えてしまったワケ 国には期待できず……私たちができること(2/3 ページ)

[古田雄介,ITmedia]

串田議員 相続人がいつも故人の財産を確認しているわけではありません。亡くなったときに通帳などを見つけて財産を把握するのが一般的だと思いますが、最近はペーパーレス化が進み、デジタルでの取引が多くなっています。そうなると相続人はどのように財産を認識していくのかということが今後問題になってくると思うのですが、どのようにしたらよろしいでしょうか?

栗田監督局長 相続人の方が被相続人の方の資産を把握するためには、まずは金融機関におきまして相続手続きに入っていただくことが必要だと考えています。その際には相続人と被相続人関係を証明する書類の提示などが求められますけれども、(略)相続手続きに入っていただきますと、金融機関のほうは基本的に被相続人の資産状況の情報提供などを柔軟に行ってくださると承知しています。

 被相続人が相続人の使っていた金融機関自体を知らないという場合もあり得ますけども、こうした場合は例えば税理士などに遺産整理を依頼して、広く金融機関に口座の有無などを確認するということが必要だと考えています。

串田議員 聞いていると簡単そうですけど、インターネット上の証券会社での株取引くらいだと分かりますが、FXだとか暗号資産だとか山ほどあるわけですよね。そのなかで被相続人が行っていた取引というのを、相続人が認識するのは非常に大変だと思うのですけど、税理士がどうやって全ての金融機関に名前を確認するのでしょうか?

栗田監督局長 おっしゃる通り、なかなか亡くなった方が取引されていた全ての金融機関を把握するというのは、実際問題として難しい点があるかと存じます。けれども、一部の金融機関におきましては、一定年齢以上のお客さまに対して定期的に連絡を行っているというような例もありまして、そのようなものが残っていますれば、そういうものをよすがにして金融機関に連絡をとっていただくことになるかと考えています。

串田議員 その取引もかつてのような郵送のようなものなら分かりやすいのですが、全部ペーパーレスになって、ネット上でIDとパスワードを入れないと自分の取引が分からない。(略)相続人はどこに取引しているのか分からないという場合は、本当に把握することが難しいんじゃないかなと思うのですけれど。相続税を把握する方法は、政府としてはどのように行っているのでしょうか?

 栗田監督局長の答弁は、従来の金融資産の相続手続きの一般論に終始しているように映った。唯一、デジタルが台頭している現状を反映したように感じたのは、「なかなか亡くなった方が取引されていた全ての金融機関を把握するというのは、実際問題として難しい点があるかと存じます」というくだりだ。ただ、そこから続く対応例はやはり従来型の一例でしかなく、口座の糸口すら気付くことが難しいデジタル金融資産の根本的な解決策とはどうも結び付かない。

 「相続税を把握する方法」についての答弁は、国税庁の田島淳志次長が担当した。しかし、こちらも従来型だった。

田島次長 国税当局として、金融資産にかかわる情報を把握する手段としては、例えば金融商品の特定口座年間取引等報告書などの法定調書がございます。これらの調書においてはペーパーレスで行われているかどうかに関わらず、全ての取引について金融機関に提出が義務付けられています。当局としましては、こうした調書により得られる情報を活用します。この他にですね、あらゆる機会を通じて課税上有効な資料情報の収集に努めておりまして、そのうえで課税上の問題があると認められる場合には税務調査などを行うなどして、適正公平な課税の実現に努めているところです。

 申告された相続税に嫌疑があったときは法定調書によって厳密に資産を調べる。逆にいえば、嫌疑が生じるまでは国税局は動かないわけで、ほとんどの相続の場面では関わり合いを持たない。それはつまり、「デジタルだから気付きにくい」「気付きようがない」と困る相続人に対して何も助けにならないということだ。

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