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» 2020年01月30日 07時00分 公開

国会中継を見て「デジタル遺品」の専門家が身構えてしまったワケ 国には期待できず……私たちができること(3/3 ページ)

[古田雄介,ITmedia]
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正直、アップデートはまだ先だと思う

 ネットでこの中継を見て、国はデジタル遺品に対してまだ何も対策を考えていないということが伝わってきた。

 死亡したユーザーの権利やデジタル遺品の相続について、これまで最前線で対応してきたIT企業でさえ、対応がおぼつかなかったり、死後対応が曖昧なままの利用規約を使い続けたりする現状において、それは致し方ないことだと思う。

 ただ、それを分かったうえで「デジタル遺品はまだちょっと普通の遺品より面倒な存在だな」という思いを強くしたのも確かだ。

 デジタル遺品も本質は従来の遺品と何も変わらない。デジタルであってもアナログであっても、亡くなった人が所持していたものという点は共通している。いつか特段の区別をすることなくシームレスに対応できるようになればいい。そんな状態を拙著『スマホの「中身」も遺品です』(中公新書ラクレ)では、「遺品2.0」と表現した。そんな世の中はまだちょっと先みたいだ。

 デジタル遺品は、相続人がデジタル環境に不慣れだと実態がつかみにくいし、デジタルに精通していてもIDやパスワードが分からないと先に進めないということもよくある。今後はネット銀行やネット証券のほか、○○ペイなどがサブ口座のような役割を果たすこともあるだろう。

 デジタル遺品は相続の場面でどんどん無視できない存在になっていく。それに対して、社会のサポートはどうにも追い付きそうにない。

 となると、消費者たる私たちがやれることは自衛ということになる。例えば、メインスマホのパスワードや所持しているネット口座の情報だけ紙に書き出しておいて、実印や紙の預金通帳などと一緒に保管しておく。パスワードなどの重要情報には修正テープを二度貼りしてマスキングすればいい。そうすればいざというときに相続人たる家族に、従来の資産と同程度の確率で「気づいて」もらえるはずだ(もちろん、隠したいデータがあれば、別のところに保管しておく)。

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photo 名刺大のカードにスマホのパスワードやネット銀行の口座情報などを書いて、マスキングしたものを保管しておく。これだけでデジタルの気付きにくさはずいぶん解消される

 デジタル遺品の問題は日本だけでなく、米国やEU諸国などでも論議されている。いずれは何かしらのガイドラインや法律が生まれるだろう。そのきっかけが誰かの悲劇でないことを祈る。

プロフィール

古田雄介

1977年名古屋生まれ。2004年からITmedia PC USERにて「古田雄介のアキバPickUP!」を連載中。2010年からデジタルと死生の関係性を追いかけている。2020年1月に『スマホの「中身」も遺品です』(中公新書ラクレ)を刊行。自サイトは古田雄介のサイト

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