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» 2020年01月30日 12時18分 公開

目標の200万回線は困難に…… 伸び悩むMVNO「mineo」が挽回策 カギは“通信回線の譲り合い”

オプテージが手掛けるMVNO「mineo」が伸び悩んでいる。2020年1月時点での契約数は117万回線(前年同期比4万件増)で、18年時点での目標だった200万回線の獲得は困難な状況だ。これを打破すべく、ユーザー同士で回線を譲り合える「ゆずるね。」などの新サービスを提供する。

[濱口翔太郎,ITmedia]

 オプテージが手掛けるMVNO「mineo」が伸び悩んでいる。2014年のサービス開始から右肩上がりで成長し、約4年間で契約数を100万回線に伸ばしたものの、18年ごろから成長が鈍化。以前は「20年に200万回線を獲得する」との目標を掲げていたが、20年1月時点での契約数は117万回線(前年同期比4万件増)にとどまっている。格安SIM市場でのシェアは約8.3%で5位(19年9月時点)につけているものの、かつての勢いは失われている。

 同社のモバイル事業戦略部長、福留康和氏は、1月29日の記者発表会で「確かに18年の時点では200万回線が目標だったが、現段階では市場シェア10%以上を目標としている」と、軌道修正を余儀なくされたことを明らかにした。

photo オプテージ モバイル事業戦略部長の福留康和氏(=中央)

ユーザーとの密接な対話が特長

 mineoがかつて急成長を遂げた背景には、ユーザーとの密接なコミュニケーションによって顧客満足度を高める独自戦略があった。具体的には、ユーザー向け交流サイト「マイネ王」を運営するほか、運営側とユーザーが直接対面するオフ会なども開催。余ったデータ通信容量を全国のユーザーで分け合える「フリータンク」など、ニーズに沿った機能を数多く提供してきた。

 だが近年は、Y!mobileやUQ mobileなど大手キャリアのサブブランドが、潤沢な資金を生かした広告戦略と安価な料金プランによってシェアを急拡大。通信サービスに詳しく、契約する通信会社を自身で選ぶ“高リテラシー層”による、キャリアからMVNOへの乗り換え需要が一巡したこともあり、格安SIM市場そのものが活気を失っている。

photo mineoの契約数の推移

アンバサダー制度は抜本的な改善にはつながらず

 mineoはこの状況を打破すべく、19年春に「アンバサダー制度」を開始。コアユーザーにボランティアとして運営に協力してもらう施策で、(1)運営側と共に新サービスを考案する「共創アンバサダー」、(2)新規ユーザーにビデオチャットなどで設定方法をレクチャーする「サポートアンバサダー」――などから構成される。

 当初は、密接な関係を築いてきたユーザーに協力してもらうことで、安心感のあるブランドイメージを醸成し、新規獲得を加速させる狙いがあった。

 だが、アンバサダー制度の開始後、総務省による要請や改正電気通信事業法を踏まえ、大手キャリアが安価な料金プランを打ち出した。また、MNO事業に参入した楽天が、基地局整備の遅れなどによって正式サービス開始に至らず、動向が読めない状況となった。

 これらの影響もあり、同制度はmineoの爆発的なユーザー増にはつながらなかった。mineoによると、19年に活動した共創アンバサダーは25人、サポートアンバサダーは11人。一定の貢献はあったというが、物足りない印象だ。

回線を譲り合える新サービス「ゆずるね。」

 こうした状況下で、「市場シェア10%」という新たな目標を達成すべく、mineoはこの3月から新たな取り組みを始める。その目玉となるのが、回線が込み合う正午〜午後1時にネット利用を控えたユーザーに特典を付与し、回線の混雑緩和を図る新サービス「ゆずるね。」(3月23日開始予定)だ。

 mineoユーザーは「仕事で忙しく、昼休みにネットを見る時間がない」といった場合に、公式アプリ上のボタンで「通信を控える」と意思表示できる(受け付け時間は前日の午後1時〜当日の午前11時30分)。その後、宣言通りに正午〜午後1時のパケット消費を数MBに抑えた場合、運営側が達成回数に応じてパケットなどを提供する。

 具体的には、5回達成したユーザーにはパケット100MBを付与。10回達成した場合は、夜間(午後11時〜午前7時)のネット利用を使い放題とする。15回達成すると、パケット200MBを提供する。20回達成すると、高速なデータ通信を1日中使える「プレミアム1DAYパス」を発行する。

photo 「ゆずるね。」のインセンティブ一覧

 「プレミアム1DAYパス」を獲得したユーザーが、その利用権を他者に譲れるサービス「シェアスペース」も提供し、徹底して“助け合い”ができる体制を築く。これらのサービスは、共創アンバサダーから寄せられた「混雑時にあえて使わなかった場合にインセンティブが欲しい」という要望を踏まえたものだという。

 福留事業戦略部長は「帯域はみんなの共有財産だからこそ、ユーザー同士でバランスを取れるようにする。より快適に通信環境をご利用いただき、いままでよりも楽しくハッピーになってもらいたい」と語った。

 この他、ユーザーが月額350円を追加で支払うと、通信速度は最大500kbpsに落ちるが、パケットが使い放題になるサービス「パケット放題」を用意。契約しているプランを問わず利用できるオプションとして、3月3日から提供する。

 両サービスの開始に先駆け、月額基本料金を6カ月間にわたって800円割り引く他、データ容量を1GB増量するキャンペーンも、2月1日から新規ユーザー向けに提供する(5月31日まで)。

photo 500kbpsでは動画の視聴なども可能という。

他社との差別化で契約数を伸ばせるか

 これらの施策は、サービス内容と料金設定をフレキシブルに決められるMVNOならではのもので、大手キャリアとは明確に異なる。料金の安さ、データ容量の多さ、SNSなどの通信量をカウントしない“カウントフリー”などを打ち出す事業者が多い格安SIM市場においても、他社との差別化を図ることができる。

 福留事業戦略部長は「2020年は共創戦略を深化させ、MVNO市場の中でオンリーワンの地位を確立したい」と意気込んでいる。mineoは新戦略によって、停滞が続く格安SIM市場において契約数を伸ばし、伸び悩みを払拭(ふっしょく)できるのか。

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