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今、あらためてPS5の姿を想像してみる CPUとGPUはどうなる編(2/5 ページ)

» 2020年01月31日 17時37分 公開
[西川善司ITmedia]

CPU性能は標準PS4比で10倍近くになる?

 PS5については、これまでに数度、ソニー(ソニー・インタラクティブエンタテインメント、以下SIE)がリーク的なプロモーションを行っている。

 最初に情報が出てきたのは2019年4月。米国のテック系オンラインメディアの「WIRED」が、現行PS4のアーキテクトであり、次世代プレイステーションのアーキテクトも務めるマーク・サーニー氏を取材したレポートだった。これはスクープ記事というよりは、SIEがWIREDを使って次世代プレイステーションの予告プロモーションを行った体裁だ。SIEは、この記事が公開された後、あらゆるメディアに対しての追加取材を断っている。気になるのは「なぜこの広報戦略にWIREDが選ばれたか」だが、理由は単純で、最もたくさんの言語に翻訳されて公開されるメディアだからだという。

 この後、SIEは19年10月に、プレスリリースの形で「次世代プレイステーションはプレイステーション5(PS5)という名称に決定」したと発表している。また、例によって、この発表と同期する形でWIREDが、再びマーク・サーニー氏を取材したレポート記事を掲載している

 年が明けて、20年1月に開催された大型IT系コンベンション「CES 2020」のタイミングで、SIEは「PS5」のロゴを発表した。

photo CES 2020の会期に合わせて行われたソニーのプレスカンファレンス内にて「PS5」のロゴが発表された

 ソニーによる公式情報は大体このくらいだ。ここまでの情報を整理しつつ、解説することにしよう。ここからは、SIEが19年10月に発表したプレスリリースを項目ごとに引用し、それぞれ解説を加えるスタイルをとりたい。

  • AMD社製カスタムチップ搭載
  • CPU:x86-64-AMD Ryzen “ZEN2”、8 cores/16 threads
  • GPU:AMD Radeon RDNA (Radeon DNA) -based graphics engine
  • ゲームにおいて最大8K解像度出力まで対応

 PS5では、PS4と同じAMD開発のプロセッサを採用することが公言された。それによると、CPUは、「ZEN2」(開発コードネーム)、一方でGPUはRDNAアーキテクチャベースのRadeon系が採用されるようだ。

 現行PS4のCPUは、13年前後のノートPCや小型デスクトップPC向けのAPUに採用されていた「Jaguar」(開発コードネーム)を8コア構成としたものであった。このJaguarはどちらかといえば「最高性能の追求」をしたものではなく「省電力に配慮しつつもそれなりに高性能」といった設計思想のアーキテクチャであった。対するPS5に採用されると見込まれるZEN2はどうかといえば、PCはもちろんのこと、サーバから高性能ワークステーションでの使用も想定されて設計された高性能CPUになる。

 ZENシリーズはAMDが8年ぶりに刷新した新CPUアーキテクチャで、17年に登場。18年には改良を加えたZEN+をリリース。ZEN2はさらなる改良版で世界初の最新7nmプロセスで製造されるCPUとして19年夏頃からリリースされている。

 筆者の性能試算によればPS5のCPU性能はPS4の7倍から10倍に到達するとみられる。

 PS4やPS4 ProのCPUの浮動小数点演算性能はそれぞれ約102.4 GFLOPS、約136.3 GFLOPSと計算できる。

PS4:8 FLOPS×8コア×1.6GHz=約102.4 GFLOPS

PS4 Pro:8 FLOPS×8コア×2.13GHz=約136.3 GFLOPS

 対してPS5は3GHz駆動と仮定すると768GFLOPS、4GHzと仮定すると1024GFLOPSと試算できる。

PS5:32 FLOPS×8コア×3〜4GHz=約768〜1024 GFLOPS

photo 写真は2020年1月に発表されたノートPC向けRyzen 4800シリーズ。ZEN2(8C16T)CPU+Radeon VEGA(8CU)からなるAPU。実質的にPS5に搭載されるAPUの親戚的な存在。組み込まれるGPUのCU数はその要求性能から最低でも50CU(compute unit)以上にはなるはず

 ここまで性能が上がるのは、PS4時のJaguarに比べてZEN2では浮動小数点演算器の個数が2倍化し、さらに同時計算量も2倍化しているためだ。また、PS5のCPUはPS4時と同じ8コアとなるが、1コアあたりが2スレッドを処理できる同時マルチスレッドにも対応するため、見かけ上は16コアCPUとして動作する点も高性能化の大きなポイントとなっている。

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