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今、あらためてPS5の姿を想像してみる CPUとGPUはどうなる編(3/5 ページ)

» 2020年01月31日 17時37分 公開
[西川善司ITmedia]

リアルタイムレイトレーシングに対応するGPU ただしその姿はまだ謎に包まれている

 そしてPS5に採用されると見込まれるGPUは、前述したように、RDNAアーキテクチャベースのRadeon系が採用されるようだが、この「RDNA」とは、19年夏頃からリリースされたAMDの新世代GPU、Radeon RX 5000シリーズのコアアーキテクチャのブランド名になる。このRadeon RX 5000シリーズは、開発コードネーム「NAVI」と呼称されるもので、WIREDの4月の記事では「PS5はNAVIベースになる」という記述もあった。

 で、このRDNAとは何か……という部分なのだが、簡単に解説すると「最新グラフィックス処理に都合がよいアーキテクチャ」ということになる。

 順を追って説明すると、PS4世代に採用されていたRadeon GPUは、11年に発表されたGCN(Graphics Core Next)アーキテクチャベースのもので、どちらかといえば、基本設計をグラフィックス処理とGPGPU(General Purpose GPU。GPUでグラフィックス処理以外の汎用計算を行うこと)の両方をそれなりにうまくこなせる「両刀使い」的なものとしていた。

 これはこれで有用な設計思想だったのだが、NAVI世代からは「GPGPUもできるけど、グラフィックス処理性能重視」という感じの設計思想としたのである。余談になるが、GCNアーキテクチャは依然としてGPGPU重視のGPUには採用され続けるようで、21年に完成予定の米エネルギー省オークリッジ国立研究所のスーパーコンピュータ「Frontier」に搭載される予定のGPUはGCNベースだとされている。

photo 19年夏にリリースされた「NAVI」にリアルタイムレイトレーシング技術は搭載されていなかった

 さて、ソニーは「PS5がはレイトレーシング技術に対応する」「8Kに対応する」ことを認めているが、ここにはまだ謎が多い。

 レイトレーシング技術自体は1970年代から存在するアルゴリズムだが、これをリアルタイムに実行するためのハードウェア設計の標準的な方針は18年3月にMicrosoftが「DirectX Raytracing」(DXR)として発表した。PSプラットフォーム向けのゲーム開発でDXRそのものが活用されるわけではないが、PS5においてDXRと同系アーキテクチャのリアルタイムレイトレーシング技術が採用されることはほぼ間違いないようだ。

 「レイトレーシング技術とは何か」という部分にも軽く触れておこう。

 初代PSに始まり、全てのゲーム機、そして全てのGPUによるリアルタイムCG描画はラスタライズ法と呼ばれる手法で実践されてきた。これは画面上に描かれるピクセルごとの陰影計算を直接光によるものに限定して行う方式で、高速性に優れるがリアリティーの再現はある程度諦めた手法であった。

 一方で、映画向けCGなどに採用されているレイトレーシング法では、各ピクセルごとの陰影計算をより正確に行う描画手法なのだが、とても計算量が多くリアルタイムには向かないとされてきた。具体的には、着目しているピクセルから3D空間にレイ(Ray)と呼ばれる探査船のようなものを射出して、そのピクセルに影響を及ぼすであろう光情報を回収して計算を行う。この仕組みにより、相互反射、遮蔽(しゃへい)といった複雑な光の伝搬を再現できる。

 18年3月にMicrosoftが発表したDXRは、このレイトレーシングをリアルタイムに行うための仕組みを規格化したものになる。GPUメーカーのNVIDIAはこのDXRに対応した最初のGPU製品、GeForce RTXシリーズを18年後期にリリースしている。

photo 想定される3Dシーン
photo ラスタライズ法の概念図
photo レイトレーシング法の概念図

※上記イラストは拙著「ゲーム制作者になるための3Dグラフィックス技術 改訂3版」より引用

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