ITmedia NEWS > STUDIO >
ITmedia AI+ AI活用のいまが分かる

AIだけで曲を作ったら”人っぽい部分”が見えてきた 作詞作曲、歌、仕上げも全部AI(2/5 ページ)

» 2020年03月06日 07時00分 公開
[くろ州ITmedia]

作詞担当「むげんミクうた」 当たりを引くまでやり直し

 まずは歌詞を作る。作詞を担当するのは「むげんミクうた」だ。これは、VOCALOID音源の制作や音楽制作ツールの代理販売などを行うクリプトン・フューチャー・メディアのエンジニア@takisokさんが2017年に公開したWebサービス。既存のボカロ曲の歌詞を学習したAIが、サイトを開くたびに“ボカロ曲っぽい歌詞”を自動で生成してくれる。

 取り入れるキーワードや歌詞の長さなどを指定する機能はないため、ちょうどいい歌詞ができるまでWebサイトをリロードし続けた。15回目で言葉として怪しい部分が比較的少ないものができたため、これを採用した。

 要望を伝えないまま十数回も作詞をやり直させるのはAIいじめのような気がして心苦しいが、文句を言ってこないのはAIならでは。

photophoto 日本語が怪しい部分が多いが、このまま制作を進めた。タイトルの「ture」は辞書に載っていない未知の英単語だった。

 楽曲制作の手順は一般的に、歌詞を先に作る「詞先」と曲を先に作る「曲先」に大きく分かれるといわれる。今回はメロディーを基に歌詞を作るシステムを見つけられなかったため、詞先で曲を作っていった。

作曲担当「ORPHEUS」

 むげんミクうたが作った歌詞を基に曲を作ったのが「ORPHEUS」(オルフェウス)だ。これは、2006年に東京大学大学院の情報理工学研究科で研究開発された、確率モデルを使って作曲作業をシミュレートするシステム。歌詞を入力して音楽ジャンルなどを指定すると自動でメロディーを生成する。

 ORPHEUSが採用している確率モデルは、機械学習とは違い既存楽曲の学習などは行っていないという。ORPHEUSの開発を主導する嵯峨山茂樹さんによると「機械学習から作られるのは“既存曲模倣システム”だが、それが自動作曲の目的かどうかは、研究者により観点が異なる」という。

 作曲AIはすでに幾つもあるが、ボーカルのない曲を作るものだったり、歌詞を基にメロディーを作る機能がなかったりと、今回の趣旨には合わないものがほとんどだった。また、海外製のAIは作曲センスも洋楽風なので日本語の歌詞がきれいにはまりにくいことも分かった。AIにも文化や性格が出るのだ。

 今回はORPHEUSに「弾き語り風」「テンポは少し遅め」の曲をリクエストした。出来上がったメロディーはフォークソングのような雰囲気だが、歌詞の文法が怪しいからか、歌詞の途中でフレーズが途切れてしまう部分もあった。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.