イベントやライブの中止など、新型コロナウイルス感染症の影響は音楽業界にまで及んでいる。著名アーティストがライブを中止あるいは延期するといった報道に接する機会は多い。しかし、著名とはいえないが、日々、小さなライブハウスやホールなどで地道にライブ活動を行っているアーティストにも多大な影響が及んでいることをご存じだろうか。この危機をYouTubeのライブ配信で乗り切ろうと奮闘する、あるアーティストの取り組みを報告する。
アコーディオンに似た蛇腹楽器「バンドネオン」を演奏する仁詩(ひとし)さんと、共同でライブ配信を行う、パーカッション担当の熊本比呂志さんの両人に話を聞いた。両人ともに、新型コロナウイルス問題に端を発する自粛の影響を受けている。「3月だけでも11本のライブが中止になり、かなりの減収」(仁詩さん)と顔を曇らせる。具体的な金額について仁詩さんは言葉を濁すが、筆者の推測では、ウン十万円レベルでの減収は確実であろう。
今回の騒動が勃発する以前から、両人の間ではライブ配信を実施したいという気持ちはあったという。しかし、「日々の活動に流されて、実際には行えてはいなかった」(仁詩さん)そうだ。まさにこれを契機として急きょライブ配信に着手したことになる。熊本さんが以前から配信用機材をそろえていたことも後押しした。
ただ、全てが順調に運んだわけではない。プロとして活動している両人だけに、ライブ配信を実施する以上、視聴者から何らかの形で対価を得る方法を考えなければならない。まず思い浮かんだのが、YouTubeのスーパーチャットを利用した「投げ銭」方式だが、スーパーチャットを利用するためには、チャンネル登録者数が1000人以上、過去12カ月の動画再生時間4000時間以上という条件を満たしていなければならない。残念だが、両人ともこの条件には当てはまらない。
ただし、スーパーチャットの導入は無理でも、YouTubeを利用したライブ配信は問題なく実施できる。そこで仁詩さんが目をつけたのが、ある有名QRコードを利用した決済アプリだ。この決済アプリは、キャッシュレスサービスとして大々的にプロモーションを実施しており、認知度も高い。加盟店も多く、アプリを導入している人も多いと考えた。そこで、配信動画の説明欄に投げ銭の受け取り用リンクを掲載した。
気になるのは投げ銭の額だが、仁詩さんは「決して十分な額とはいえないが、確実な手応えを感じる」という。視聴者数は、のべ数百人程度だが、初めてのQRコード決済アプリと格闘しながらも頑張って投げ銭してくれた人がいたり、家族に方法を教わって支払ってくれた人もいるそうだ。ただ、投げ銭だけが応援の方法ではない。両人は、ファンに対し、次の3つの応援手法を伝えている。
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