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» 2020年03月25日 06時01分 公開

動画の世紀:新型コロナウイルスで削除される動画が増える? パンデミックが促すYouTubeの変化 (1/2)

COVID-19の影響は動画サイトにも出ている。

[小林啓倫,ITmedia]

 新型コロナウイルスによる感染症(COVID-19)が世界中で猛威をふるっています。3月11日にWHO(世界保健機関)がパンデミック宣言を出し、各国が厳しい対策を進めていますが、イタリアなど一部の国では「医療崩壊」とも呼べる状況が起き、震源地である中国を超える惨状に見舞われています。

 当然ながら、その影響は現実の世界にとどまりません。本連載がテーマにしているオンライン動画の世界にも、大きな影響が出始めています。

動画の世界にも影を落とす新型コロナウイルス

 まずは動画系のサイトへのトラフィックの増加です。これには大きく分けて2つの理由があり、一つは人々が新型コロナウイルスの情報を求めて動画サイトにも殺到していること、もう一つは感染症流行対策として、各国が外出制限措置を取った結果、屋内で楽しめるエンターテインメントとして動画サイトが浮上していることです。

 いずれにしても動画サイトへのトラフィックが増えており、各企業や規制当局が対応に追われています。例えば欧州委員会は、動画をストリーミング配信する企業に対し、ネットワークへの負荷を軽減する措置を取るよう要請。その結果YouTubeは、欧州地域で同社のサイトを立ち上げた場合、ストリーミングの画質がデフォルトで「標準」になるように設定を変更しました。あくまでデフォルト設定ですので、ユーザーが主導で高画質を設定することもできるのですが、デフォルトがいかに重要かは皆さんも実感されているでしょう。これにより通信量がある程度まで抑制されると期待されていて、Netflixも欧州において同様の措置を取ることを発表しています。

 また最近YouTubeにアクセスすると、トップページに次のようなコーナーが表示されることに気付かれたでしょうか。

photo COVID-19に関するニュース

 この「COVID-19に関するニュース」というコーナーは、YouTubeが3月19日から世界各国に順次展開を始めているもので、文字通りCOVID-19関連の動画がまとめられている場所になります。YouTubeがこのような対応を行ったのは、もちろん新型コロナウイルスに関する情報を伝えるためなのですが、特に「正しい」情報が伝わりやすくするという狙いがあります。

 大きな事件や事故、自然災害等が起きると、誤解や根拠のないうわさ話、そして悪意のあるデマが拡散されることがあります。そして以前の回でも解説したように、YouTubeはそうしたデマを効果的に拡散する場所として利用されてきました。残念ながら新型コロナウイルスの場合も同様で、それに関連するさまざまな偽情報が飛び交っていることも、いまの状況をよくご存じの皆さんには説明するまでもないでしょう。

 既にYouTube上には数々のデマ動画が投稿され、大勢のユーザーによって閲覧もしくはシェアされています。例えばBuzzFeedが2月11日に公開した記事によれば、US Military Timesというチャンネルに投稿された「コロナウイルスは中国の生物兵器である」と主張する動画は、記事が公開された時点で120万回近く再生されていたそうです。

 また「コロナウイルスの発生源はコウモリのスープである」として(もちろんこれも根拠のないデマです)、中国人がこの料理を口にするシーンを写した動画(実は著名なインフルエンサーがTikTokに投稿した映像を勝手に編集したもの)は、180万回も再生されていました。他にも十万回以上再生されている陰謀論動画が何本かあり、現在はすべてYouTube側によって削除されているものの、それまでに広く拡散してしまったことが批判されています。

 そこでYouTubeは、対抗措置の一つとして、報道機関や政府機関といった信頼できる情報源が公開した動画を集める「COVID-19に関するニュース」コーナーを立ち上げたというわけです。デマの拡散を防ぐ手段の一つとして、誤った情報が人々の頭に入ってしまう前に、正しい情報を入れておくというものがあります。人間は一度ある見方を身に付けてしまうと、それを否定して新しい見方を身に付けるということが非常に難しくなります。であれば最初に入れる情報を正しいものにしよう、という狙い。YouTubeが人々の目に触れやすいトップページにCOVID-19関連情報を集めたことは、一定の効果が期待できるといえるでしょう。

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