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「コミケは滅びぬ。何度でもよみがえるさ」──有志が挑む「バーチャルコミケ」の道(2/4 ページ)

» 2020年04月03日 14時25分 公開
[長浜和也ITmedia]

 「趣味の領域で楽しむ同人活動」とはいうものの、“刷り部数”が数百部から数千部規模になる大手同人サークルでは、商業活動に匹敵する売り上げと利益をイベント開催日(もしくはブース出展日)の一日で稼ぐ。そこまではいかなくとも、最近の同人イベントでは商業誌や商業作品に匹敵する見栄えをする頒布品が多くなり、制作コストも上昇したことから、数十万円規模の製作費回収を目指す同人サークルも少なくない。新作を投入するサークルや新規参加の同人サークルにとって、イベントは周知拡大の機会になり、イベントで成果を上げた同人サークルの頒布品は、イベント終了後に委託販売で売り上げにもつなげられる。

 さらに、同人系イベント、特にコミックマーケットのような大規模イベントになると関連産業に与える影響も大きい。個人向け小ロット印刷に対応している印刷会社(ボードゲームやカードゲームでは印刷加工会社も)は、同人イベントに合わせた受注が売り上げの多くを占めるため、イベントの中止は業績に大きく影響する。

 このように、同人イベントの中止は同人サークルや一般参加者、そして関連企業にとって、大きなダメージを与えることになる(一般参加者にとって経済的ダメージは少ないかもしれないが、体験という意味でその損失は大きい)。それだけに、状況が状況とはいえ主催者にとってイベントの中止はとてもつらい決断といえる。

 実際、参加を予定して頒布品の制作を発注していた同人サークルは少なくなく、出来上がった頒布品の制作費の支払いは確定しているものの、制作費の回収を予定していた頒布品の売り上げがイベントの中止でかなわなくなり、その“負債”対応のため、同人活動の休止を宣言したサークルも少なくない。

速攻で立ち上がった「対応策」

 一方で、参加予定だった同人サークルの中では主催者の中止決定を支持する意見も多い。加えて、中止になったイベントの代替案を提案する動きが各方面から立ち上がっている。

 筆者が関わるイベントでいうと、3月8日開催予定で2月27日に中止が決定したゲームマーケット2020大阪では、27日の中止告知があった直後から、「ボドゲーマー」をはじめとするボードゲーム、カードゲームを扱うショップサイトが、頒布予定だった新作製品を集めた特設ページの開設と参加告知を始め、YouTubeで頒布予定タイトルの紹介などをした。

 通常、イベント後の委託販売では、委託料などを上乗せするため、イベント頒布より高い価格になることがほとんどだが、ゲームマーケット2020大阪の特設コーナーを設けた通販サイトや委託販売では期間限定で「イベント価格」(頒布価格とほぼ同じ)で取り扱うケースも多い。購入しやすい(=同人サークルの売り上げが増える)一方で委託販売を実施するショップ側の利益が少なくなるわけで、なかなか太っ腹な支援策といえる。

 ゲームマーケットを主催するアークライトも、ゲームマーケット公式サイト内に専用の通販ページを開設し、頒布予定だった新作の取り扱いを4月1日に始めた。この通販ページでは、ゲームマーケット2020春の参加者に対しても同様の取り扱いを予告している。

アークライトは参加サークル向けに頒布を予定していた新作の取り扱いをゲームマーケット公式通販サイトで始めた。納品締め切りは4月17日としていたが、間に合わないサークルには相談に乗るとしている

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