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ディズニーのテーマパークがVRを目指さない理由テック・イン・ワンダーランド(3/4 ページ)

» 2020年04月21日 07時00分 公開
[宮田健ITmedia]

ディズニーはVRをフルに活用する ただし裏側で

 とはいえ、ディズニーはVRを完全に無視しているわけではありません。最後に1つ、面白い技術活用事例をご紹介しましょう。

ディズニー・イマジニアリングの「The DISH」

 この動画は、ディズニーの魔法を作り出すウォルト・ディズニー・イマジニアリング社内に設置された「The DISH」と呼ばれる装置です。DISHとは「Digital Immersive Showroom」の略で、VRゴーグルなしにCGで制作された空間の中に没入できるもの。中央にあるシルクハットをかぶると、その人の立っている位置に合わせた映像が、全天周のスクリーンに展開されます。これはイマジニアたちが新たなアトラクションを制作し、テーマパーク内の新エリアを歩いたときの風景を、事前に体感できるものです。

アナハイムコンベンションセンターで開催された「D23 Expo 2013」で一般公開された(古いバージョンの)「The DISH」で、エプコットの人気アトラクション「テストトラック」を疑似体験している様子

 ウォルトが初めてディズニーランドを作り出した時も、そして最新のエリア「スター・ウォーズ:ギャラクシーズ・エッジ」を作る際にもディズニーは巨大な模型を作り、ゲストの目線でどのようなものが見えるのかをチェックしました。The DISHはその考え方の延長線上にある、実にデジタルな技術活用事例です。

米ディズニーランドに展示されている初期ディズニーランドのモデル
東京ディズニーランドにまもなくオープン予定の新エリアも事前にミニチュアが作られている(17年4月の起工式にて)
動画が取得できませんでした
イマジニア、マーク・ミネ氏による解説(12年の古いバージョンのDISH)

 これ以外にも、デジタル世界にモデリングしたレストランのキッチンを作り出し、シェフが料理を作るのに最適な配置になっているかを建設前にチェックする際などにVRゴーグルが活用されているとのことです。その意味では、VR技術は間違いなく、ディズニーの中で活用されているといえるでしょう。

 14年に日本で講演したイマジニアのマーク・ミネ氏は「実際に、建物を構築するのは大変なことなので、バーチャルな世界で建設して、前もって体験する。作った後で壊すより、ピクセルを直す方が楽だ」と述べていました。その点では、ディズニーにおいてVR技術はフル活用されているといっていいでしょう。

 では、アトラクションにおいて、VRゴーグルはもう活用されないのでしょうか。

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