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ディズニーのテーマパークがVRを目指さない理由テック・イン・ワンダーランド(4/4 ページ)

» 2020年04月21日 07時00分 公開
[宮田健ITmedia]
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 個人的な見解としては、ディズニーはVRゴーグルで体験できる没入感を、何とかして裸眼で体験できないかということに注力しているのではないかと思います。最近オープンした「スター・ウォーズ:ライズ・オブ・レジスタンス」や「ミッキー&ミニーのランナウェイ・レールウェイ」、そして東京ディズニーリゾートにオープン予定の「美女と野獣“魔法のものがたり”」はそれぞれ、3Dグラスすら使わないアトラクションです。

 しかし、先に紹介した視線誘導を活用するなどで、VRゴーグルを使ったときの効果を超えるような印象を与えることを目指しているように見えます。

最新技術があったとしても「ストーリー」とずれたらダメ

 ウォルト・ディズニーという人は、世界初のトーキーアニメーションやフルカラーの長編アニメーション制作、そのために必要なマルチプレーンカメラの発明など、常に最新技術を追究し新しいことをしていました。とはいえ、ウォルトが最も重要視していたのは、最新技術を使うことではなく、伝えるべきストーリーをしっかり伝える事でした。

 おそらくですが現時点において、VRゴーグルを用いた没入感の実現は、アトラクションという表現方法においてはまだまだクリアするべき課題が多く、それ以外の最適な方法を選択したほうが効果的であるというのが、テーマパークにおける現実解なのでしょう。

 ディズニーのアトラクションにおけるデバイス、例えば3Dグラス一つをとっても、ストーリー上不自然なところはないか、とても気を遣っています。香港ディズニーランドの「アイアンマン・エクスペリエンス」ではそれを、アイアンマンスーツの機能を盛り込んだ“スタークヴィジョン・グラス”と表現しています。東京ディズニーランドの「ミッキーのフィルハーマジック」ではステージを見るための“オペラグラス”として、3Dグラスを着けさせるのです。

 決して提供側の都合で着けさせているわけではなく、ストーリーによって呼び名を変え、意味を作り出しているのです。テーマパークのアトラクションに導入するには、VRゴーグルは大げさすぎるため、理由付けが難しいというのも、採用に至らない大きな理由なのかもしれません。

 本当に必要なのは、ストーリー」に自然に没入できること。多くの人が自然とスルーしてしまう、そんな細部へのこだわりこそが、没入感実現のために重要なのかもしれません。これはテーマパークならずとも、多くのビジネスで参考になることではないでしょうか。

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