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ZHD、20年3月期は売上高が初の1兆円超え ZOZO効果でEC強化 「激動の1年」は増収増益

» 2020年04月30日 17時59分 公開
[濱口翔太郎ITmedia]

 Zホールディングス(HD)が4月30日に発表した2020年3月期(19年4月〜20年3月)の通期連結決算は、売上高が前年同期比10.3%増の1兆529億円、営業利益が8.4%増の1523億円、最終利益が3.8%増の817億円と増収増益だった。売上高が1兆円を超えるのはヤフー時代を含めて初。広告事業が好調だった他、通販子会社アスクルや、19年11月に連結子会社化したZOZOの業績が増収増益に寄与した。

 決済サービス「PayPay」で積極的に還元キャンペーンを行った影響で223億円の持分法投資損失を計上したものの、他の事業の営業利益でカバーした他、運営元のPayPay社に関連して108億円の持分変動利益を計上。最終利益も増益となった。

photo Zホールディングスの川邊健太郎社長

「激動の1年」の施策が奏功 EC事業が伸長

 ZHDは20年3月期に、ソフトバンクグループ傘下からソフトバンクの連結子会社に移行した他、旧ヤフーからZHDに社名を変更し、持ち株会社制を導入。ZOZOを買収し、LINEとの経営統合も発表するなど、M&Aも積極的に行った。川邊健太郎社長は、こうした施策を振り返って「社史においても類を見ない激動の1年だった」と説明。「機を逃さないためにも、スピード感を持って取り組んだことは非常に重要だった」と語った。

 ZOZOの買収によってファッション領域における「PayPayモール」の新規顧客が増えたこともあり、「ヤフオク!」なども含むコマース事業の売上高は7427億円(前年同期比14.3%増)、営業利益は807億円(同44.7%増)に拡大した。eコマース全体の取扱高は2兆1473億円(物販のみ、同14.3%増)に拡大した。

 主に第4四半期(20年1〜3月)は新型コロナウイルス感染拡大と重なったが、コマース事業への悪影響はなく、むしろ「巣ごもり需要によって成長した」(川邊社長)という。

 収益化には至っていないが、PayPayの決済回数は第4四半期単体で3億7500万回に達し、前年同四半期から約17倍に拡大。川邊社長は「PayPayが計画を上回る速さで成長しているため、マネタイズも前倒しで進める。夏以降は、現在一部ユーザーに提供している後払い機能を全ユーザーに広げ、収益拡大を目指す」と意気込んだ。

photo 20年3月期のコマース事業の実績

メディア事業は成長も、新型コロナで旅行・求人などに打撃

 「Yahoo! JAPAN」に掲出する広告サービスなどのメディア事業は、売上高が3086億円(前年同期比1.7%増)、営業利益が1543億円(同9.5%増)に伸びた。画像や映像、ターゲティングなどを駆使した「プレミアム広告」が好調に推移した。ソフトバンクの子会社となったため、ソフトバンク顧客への新規広告出稿の提案を強化したことも奏功した。

 ただ、メディア事業は新型コロナ感染拡大の悪影響を受け、第4四半期以降は旅行や求人などの案件が減少傾向にあるという。川邊社長は「当社はポートフォリオ経営を推進しており、手掛けているサービスは100を超える。コロナの影響で一部の事業が厳しくても、他の事業で支えられる」と前向きな姿勢を強調した。

photo 20年3月期のメディア事業の実績

LINEとの統合は順調に進む見込み

 新型コロナの影響を考慮し、21年3月期(20年4月〜21年3月)の通期業績予想は非開示としたが、ZHDは今後も(1)ポートフォリオ経営、(2)ソフトバンクとの連携強化、(3)LINEとの経営統合に向けた準備、(4)経費削減など財務規律の強化——の4点を重視して事業を行う考えだ。

 川邊社長は、LINEとの経営統合後の事業戦略については「現在は(公正取引委員会による)企業結合審査の途中。具体的には(戦略面の)話し合いは行っておらず、審査後に本格化する」と語るにとどめたが、経営統合における新型コロナの影響は現時点ではなく、審査が順調に進めば、予定通り今秋に統合が完了する見込みだと説明した。

photo LINEとの経営統合の進捗(しんちょく)状況

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