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未経験から“AI人材”に データサイエンティストが伝える「機械学習を学ぶ意味」(4/5 ページ)

» 2020年05月01日 07時00分 公開
[堅田洋資ITmedia]

AI導入の推進に欠かせない「ビジネストランスレーター」

 課題が見つかり、いざAI・機械学習を使って課題を解決しようとしても、ビジネス側の担当者と、専門家であるデータサイエンティストやデータエンジニアの間で、コミュニケーションがうまくいかない、ということはよくあります。

 プログラムが書けるエンジニアや機械学習を使いこなすデータサイエンティストがいたとしても、現場のニーズや状況が分からなければ、実際に生々しいビジネス上の課題を解決するのは難しいです。逆に、ビジネス側が全く技術が分からない、技術には興味がないなどということでは、より良い課題解決を行うことは難しいでしょう。

 そこで重要になってくるのが、現場の業務を理解し、かつ解決の手段を持つデータサイエンティストやエンジニアのやっていることも理解し、両者の間に入って、つなぐ役割を果たす「ビジネストランスレーター」の存在です。

 ビジネス課題とそれを解決する手段(データや技術)の両方を理解しているハイブリッド人材であるビジネストランスレーターは、今後ビジネスにおけるさまざまな場面で重宝される存在になるでしょう。

5段階の問いのレベルを意識し、難易度に合わせた道具を使う

 ビジネストランスレーターには、課題を解決する手段にはどんな技術やアプローチがあるかを知り、専門家であるデータサイエンティストやエンジニアの話を理解できる必要があります。

 ここで課題を解決するために答えるべき「問い」を5段階で表現したいと思います。

 5段階の問いを営業職を例に説明します。

1段階目:先月の商談数は何件か、Web経由の問い合わせは何件で何%受注できているか、など過去や現状の数値を把握する

2段階目:アウトバウンドの場合、どのくらい問い合わせが増えるか、など事象をかけ合わせて把握する

3段階目:価格を半額にすると、どれくらい売上が増えるか、など因果関係を把握する

4段階目:営業マンを1.3倍にすればどれくらい売れるかを予測する

5段階目:1〜4段階目までができると最適解が導ける

 筆者は、この5段階の問いにおいて、下の段階ができていなければ、上の段の問いを答えるのは難しいと考えています。そのため、最適解を知りたいあまり、最下段にある「過去や現状の把握」をおろそかにしても良い答えを得ることは難しいでしょう。組織的に取り組みたいのであれば、なおさらです。1段階目から順にクリアしていくことが重要です。

 さて、ビジネストランスレーターになるためには、どのくらいのスキルが求められるのでしょうか?

 一つの目安として、筆者は各問いに対してどのような手段があり、その手段がどのようなものかを理解しておくことは最低限必要だと考えています。例えば、最下段の「過去や現状を定量的に把握」したいというときは、データの可視化・集計や、クラスタリングなどの道具の概要は頭に入っていてほしいところです。

 なぜデータ分析に関する技術の理解が必要なのかというと、ビジネス現場側の事情の中でデータサイエンティストに考慮してもらいたいポイントを見極めることが求められるためです。

 また、プロジェクトマネジメントという点で、簡単なレベルの問いを、わざわざ難しいアプローチで取り組むのは非効率です。そのような非効率を避けるには、ビジネストランスレーターはデータサイエンティストと分析のアプローチについて議論することが求められます。そのような場面で、「クラスタリング? 何それ?」ということでは困るわけです。

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