前述の通り、NISTはクラウドを整理するもう一つの方法として、実装モデル(誰が利用可能な形になっているか)による分類を提示している(図2参照)。こちらも基本となるプライベート・コミュニティー・パブリック・ハイブリッドの4種類を解説しておこう。
プライベートという名前の通り、プライベートクラウドを利用できるのは、特定の組織内に所属する人々だ。サービスを提供するのは、利用する組織自体、あるいはその組織からクラウド運営を委託された外部組織となる。プライベートクラウドはさらに物理サーバの所在によって2種類に分けられ、利用組織が所有する施設内にサーバを置く場合は「オンプレミス型」、外部組織の管理下にある施設に仮想的に専用領域を設置する場合は「ホスティング(ホステッド)型」と呼ばれる。
コミュニティークラウドは利用者を特定のコミュニティー(企業グループや業界団体など)に限定したクラウドで、プライベートクラウドの一形態と見なされることもある。こちらも対象となるコミュニティー自体がクラウドを運営する場合と、彼らから委託を受けた外部組織が運営する場合がある。
プライベートやコミュニティーのように利用対象を限定せず、登録すれば誰でも使えるオープンなサービスがパブリッククラウドだ。サービスを提供するのはクラウド事業者で、利用者は彼らが用意した環境にインターネットや専用回線経由で接続し、それを共有することになる。
これら3つのモデル、さらにオンプレミスを組み合わせて構築されるのが、文字通りハイブリッドクラウドである。エンドユーザーのレベルでは、いま自分が使っているのがどの環境なのかを意識することはないが、その裏側では、リソースやシステムの要件等に従って、最適な環境が選択されている。
このようにクラウドサービスが多様化している背景には、クラウドに対する要求の高度化や変化がある。コスト削減や利便性向上だけでなく、「自社独自の要望に応えられる環境を準備したい」「セキュリティやコンプライアンスにもっと配慮したい」「より柔軟な運用をしたい」といった声を受け、さまざまな在り方が模索されているのだ。また、それを後押しするような技術の進化も進んでいる。
冒頭で述べた通り、クラウドコンピューティングは、現場で使われている技術に後から名前が付いたもので、理念が先にあったわけではない。それと同じく、現在でもその進化は現場主導で進められているといえるかもしれない。
駆け足で説明してきたが、前提知識の整理はここまでにして、次回からは具体的なサービスの姿や、主要なクラウド事業者の動きについて見ていこう。
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