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» 2020年05月20日 07時00分 公開

「クラウド」とはそもそも何か? 今あらためて学ぶ歴史と基礎知識 (1/3)

クラウドという概念が登場してから14年がたち、サービスは多様化の一途をたどっている。本記事では、クラウドの歴史について概説した上で、その種類についてあらためて解説。その形態や種類について整理する。

[小林啓倫,ITmedia]

 米サンノゼで開催されていたイベントにおいて、米Googleの元CEOであるエリック・シュミット氏が「クラウドコンピューティング」という言葉を使い、それが世間に認知されるきっかけをつくってから今年で14年。クラウドの概念や、Amazon Web Services(AWS)、Microsoft Azure(Azure)、Google Cloud Platform(GCP)といった各種クラウドサービスはすっかりビジネスの現場に定着した。

 昨今は企業がITシステムを導入する際、クラウド活用を第一に検討する「クラウドファースト」という概念も登場。公共機関にも広がり、2018年には日本政府が「クラウド・バイ・デフォルト原則」(各省庁で情報システムを構築する際、クラウドサービスの利用を第一に考えるという方針)を掲げるまでに至っている。

 ただその一方で、いったんパブリッククラウドを導入したものの、コストやセキュリティの観点から、オンプレミスやオンプレミス型プライベートクラウドに切り替える「オンプレ回帰」なる現象も一部で生まれている。とはいえ、クラウドが官民問わず、ITインフラの重要な選択肢として定着したことに変わりはない。

 そこで本連載「基礎から学ぶクラウドの進化」では、クラウドの基礎知識を解説しながら発展の歴史を振り返り、その現在と将来について考えたい。初回となる本記事ではその前座として、本題に入る前の基本的な知識を整理しておこう。

photo 本記事では、クラウドコンピューティングの基礎知識について整理する

クラウドの登場

 前述のシュミット氏の発言とは、06年8月9日のイベント「サーチエンジン・ストラテジーズ」での一幕を指している。

 この中で、当時GoogleのCEOを務めていた同氏は「そのモデルは、データサービスとアーキテクチャがサーバ上にあるべきだという前提から始まっています。私たちはそれを『クラウドコンピューティング』と呼んでいます。それは『クラウド』上のどこかに置かれています。そして適切なブラウザやアクセス権さえ持っていれば、手にしているのがPCなのかMacなのか、はたまた携帯電話なのかBlackBerryなのか、あるいはこれから開発される新しいデバイスなのかに関わらず、クラウドにアクセスできるのです」と述べた。

 彼の発言からも分かるように、「クラウドコンピューティング」という言葉が使われたのは、この場が初めてではない。現在「クラウド」として知られるコンピューティングリソースの提供・利用形態は、06年よりも早い時期から、当時の技術者たちからそのように呼ばれ始めていたのだ。

 振り返れば、1990年代後半のパーソナルコンピューティングの世界では、情報処理の際に端末側にあるデータやリソースだけを使うのではなく、インターネットを介してアクセスできるそれらを利用する形が生まれ始めていた。シュミット氏自身、1990年代から、「雲の中のコンピュータ」(computer in the cloud)という表現を使っていたと伝えられている。その意味では、潮流の変化は1990年代後半から始まっており、それが2000年代前半のさまざまな技術的進化を経て行われたのが、前述のシュミット氏の発言だといえる。

クラウド普及の転機

 また、Googleの代表的なSaaSであるGmailは、04年にβ版がリリースされ(当時は招待制だった)、06年から誰でも登録して利用できる形に切り替えられている。当時のGoogle Apps担当者へのインタビューによれば、07年7月の時点で、Gmailのアカウント数が1億に達している(現在は15億を超えている)。従って06年の時点で既に、クラウドは身近なサービスとして定着が始まっていたのだ。

 この発言があった06年から08年にかけての時期を、クラウドの転機と捉える声は多い。06年にはAWSがAmazon Simple Storage Service(S3)とAmazon Elastic Compute Cloud(EC2)を、08年には米MicrosoftがAzure(当時はWindows Azure)、GoogleがGoogle App Engine(GCPの一部)を発表するなど、企業向けのサービスが相次いで登場したためだ。

 このタイミングは、米国を中心とした景気後退の時期(07年のサブプライムローン危機、08年のリーマンショック)と重なったため、企業がITインフラにかかる導入・運用コストを削減する手段としてクラウドに注目が集まったのだ。この時期以降、パーソナルコンピューティングの世界で先行していたクラウドが、企業が真剣に考えるオプションとして定着し始めたといえる。

 有力なサービスの登場によって、クラウドは10年代に入ると、欧米はもちろんのこと、国内でも急速に普及する。総務省が国内企業を対象に行った「通信利用動向調査」によれば、クラウドについて「利用している」もしくは「利用していないが、今後利用する予定がある」と答えた企業の割合は、10年では36%だったが、14年には54.6%と過半数を占めるまでに至っている。ちょうど10年代の前半は、大量データを経営に生かそうという「ビッグデータ」への注目が高まった時期であり、その処理や蓄積を担う方法の一つとしてもクラウドのニーズが拡大した。

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