多数のケースを用意するとそれだけ在庫リスクが高まる。スマホケースはスマホの種類ごとに違うので、メーカーや端末のバリエーション全てをカバーするのは難しい。
そうすると、たくさん売れる可能性があるスマホのものだけ、バリエーション豊かなケースが作られるのも当然、ということになる。
iPhoneとAndroidをOSシェアで比較すれば、世界的には圧倒的にAndroidの方が多い。だが、iPhoneは「1シーズンに数種類」しかない一方、Androidは多数のメーカーから多数のデバイスが登場する。
日本でのiPhoneのシェアは4割から5割の間。仮に半分として、Androidはその中に10社近くがある。「シェア5割の中でバリエーションは5つほど」のものと、「シェア5割の中に10社あり、各社最低5機種はバリエーションがある」状況とで比較すると、1モデルあたりの販売数は大きく変わってくる。
さらには、日本で多く売れるAndroidスマホと、海外で多く売れるAndroidスマホがイコールではない、という点も面倒な話につながる。
海外ではSamsungのGalaxyが強く、その他はHuaweiやXiaomi、Oppoといった中国系メーカー、さらにはSamsungと同じく韓国のLGというところだろうか。しかし日本では、Galaxyはそれなりのシェアがあるものの、ソニーモバイルのXperiaやシャープのAQUOSが売れている。だが、他国でこれらのメーカーはシェアが低い。シェアが低いということは、それらのスマホ向けのケースは「日本向けだけに作る」ことになる。日本のニーズはそれなりに大きいものだが、世界中でニーズが大きいiPhoneに比べるとかなり小さいものになる。
結果として、iPhone用のケースは「多数のバリエーションが用意されやすい」状況になり、他は難しい、ということになる。
スマホケースのバリエーションは、実際、スマホそのものの販売にも無視できない影響をもたらす。先ほども述べたように、スマホケースは「アイデンティティーを示すもの」だ。だから、自分のアイデンティティーを示せる(要は気に入りそうな)ケースがたくさんあるものを選ぶ、という人も厳然としているのだ。若い女性にiPhone人気が高かったのは、そうした事情もある。
それも分かっているので、メーカーは自分でスマホケースを用意したり、スマホケースメーカーに販促費の形で補助を入れたりして、自社スマホ用のケースを作ってもらっていたりする。現在は数年前に比べると、「スマホケースならiPhone一択」と言えなくなっていると思うが、そこにはそうしたメーカーの努力も影響している。
これは個人的な見方だが、SIMロックフリー系で頑張る中国系スマホメーカーは、まだその辺の「周辺への目配り」が足りない気はする。スマホそのものの商品性は本当にすごいが、「おじさんでなく女子高生に買ってもらう道筋の組み立て」が弱いのではないか、と思うのだ。まあ、まだそこまで攻め込んでいないせいかもしれないが。
最後にまとめよう。
要は、
が複雑に絡み合って、「iPhoneの方がスマホケースが多い」「日本はスマホケースのビジネスが積極的」という状況が生まれた、ということになる。
この辺は、文化的な側面をもうすこし掘り下げてみたいとは思っているのだが、今回の考察はここまでにしておく。実はスマホケース以外の、スタンド的な製品はアメリカなどの方が先にヒットしており、そこには「ノベルティ文化」との関係もありそうに思っている。
また次の考察ができるレベルの知見がたまったら、その辺の話もしてみよう。
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