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プロ野球助っ人外国人に注目! 海外エンジニア採用・育成のコツとは?マスクド・アナライズのAIベンチャー場外乱闘!(2/4 ページ)

» 2020年05月29日 07時00分 公開

どうやって探すか? 

 外国人エンジニアが日本を知るきっかけとして、漫画やアニメなどのサブカルチャーや、豊かな文化、治安の良さ、安定した物価などの生活様式などがあります。京都にオフィスを構えるIT企業では、外国人に対して「京都で働ける」が口説き文句になるそうです。

 まずは英語による情報発信として、コーポレートサイトに日本の生活文化や、外国人が働く際の注意点など掲載するのもいいでしょう。英語圏の人材紹介会社や求人媒体の利用、SNSからのオファー、留学生や外国の大学との関係構築、リファラル(紹介)活動、外国のカンファレンス登壇やイベントのスポンサー出展などで、接点を作る方法もあります。

 ここで経営陣と人事担当と社内のエンジニアが一体となって、会社全体で採用に取り組むことが重要です。

 プロ野球の助っ人外国人でも、球団によるスカウトばかりでなく、もともと日本の野球に関心があった選手や、他選手からの紹介で入団した選手がいます。ここで重要なのは、当時の球団は既にメジャーリーグで実績のある選手でなく、マイナーリーグの選手や他球団で成績が振るわなかった選手に注目したことです。球団は高額な年俸を提示できないため、可能性のある選手を育成することを選びました。

 IT業界でも「シリコンバレーやGAFAのエンジニアは年収数千万円が当たり前」といわれますが、金額で対抗する採用では限界があります。企業は日本で活躍できそうな見込みのある人材を選び、適切な年収を提示しながら採用を進めていきましょう。

 その上で日本で活躍できる環境を準備しましょう。プロ野球選手もITエンジニアも、日本での仕事や生活に順応する必要があるからです。

日本に順応するために

 日本に順応する事が求められる以上、技術力だけでなく人柄や資質も採用段階で注視する必要があります。プロ野球の助っ人外国人も、「ベースボール」から「野球」に慣れるまで時間がかかり、すぐに活躍できませんでした。前述の名選手たちも球団が即戦力としてプレッシャーをかけず、時間をかけて育成したことが後の成功につながりました。

 また、外国人エンジニアでも語学力が求められますが、流ちょうな日本語を求めるのは現実的ではありません。特に人事評価では、マネジャーや経営陣は英語によるコミュニケーションが求められるので、社内人材の英語力を高めておきましょう。

 そして仕事の進め方や商習慣、顧客との関係なども理解が必要です。日本のIT開発では一般的に顧客側の権限が強く、急な仕様変更があっても納期を順守するという文化がありますが、外国では開発側と顧客が対等な関係だったり、SIerのような外注による開発が少ない国もあります。

 外国ではささいな不具合や個別の改修で即時対応することはありませんが、画面上で文字位置がずれたら営業は土下座して始末書を提出し、エンジニアは原因究明と再発防止策を求められます。

 プログラムは世界共通でも、仕事の進め方は異なるのです。かといって、日本のシステム開発における商習慣を外国人エンジニアに強いることは、大きなストレスになります。プロ野球でも「地球(アメリカダイリーグ)のウラ側にもうひとつの違う野球(ベースボール)があった」(ボブ・ホーナー著)という著書があるように、ベースボールと野球は似て非なるものです。外国のプログラミングに、日本のシステム開発を押し付けてはいけません。無理に日本のIT業界に順応させるよりも、本人の強みを生かす仕事づくりを進める方がずっと建設的です。

日本のサラリーマンと世界のエンジニア

 野球とシステム開発においては、チームメイトやファン、開発者やユーザーといった周囲の人々との関係構築が重要です。成績だけでなくファン人気があってのプロ野球であり、この点でもIT業界が学ぶ点は多々あります。

 遠征先のカラオケで日本の歌を熱唱するデストラーデ、ファンからのサインに常に応じるブーマー、ブライアントに至っては事実上の退団である自由契約になってもファンイベントに飛び入り参加するなど、いずれも他選手やファンに愛される存在でした。特に1987年に近鉄バファローズに入団したベン・オグリビーは、メジャーリーグの実績がありながら謙虚に全力プレーで試合に臨む姿勢などから、周囲の信頼が厚い選手でした。球場の大浴場でチームメイトと風呂に入り「白人と黒人が一緒にシャワーを浴びることなど無かった」と感動したエピソードは、多様性の先駆けといえるでしょう。

 日本のIT企業であれば、仕事が終わってから外国人エンジニアを交えて、ゲーム大会やアニメ鑑賞を開催するのも良いでしょう。間違っても居酒屋に連れ出して人生訓を押し付けたり、社員全員で踊る動画をYouTubeにアップロードするために踊るのを強要したりするのはやめましょう。

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