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プロ野球助っ人外国人に注目! 海外エンジニア採用・育成のコツとは?マスクド・アナライズのAIベンチャー場外乱闘!(3/4 ページ)

» 2020年05月29日 07時00分 公開

外国人採用に関する不安

 しかしながら外国人エンジニア採用における失敗もあります。

 前述した日本の環境に順応できない場合がある他、採用段階でポートフォリオや学歴を詐称する事例もあるので身元調査は大きな課題といえます。また、本人の資質に起因する失敗も見受けられます。プロ野球では乱闘騒ぎを繰り返したトニー・バナザード、東尾修投手(当時)殴打事件に加えて大麻所持が発覚したリチャード・デービスなどの事例があります。特にデービスの大麻所持はメジャーリーグ在籍時から疑惑があり、来日後に常用していても発覚しなかった点を含めて、球団側の調査不備を指摘される問題となりました。

 選手やエンジニア自身ではなく、採用する企業側の問題もあります。

 外国人社員の採用に失敗する企業の背景には、形だけの外国人採用枠を作り強引に日本式の仕事を押し付けてしまう価値観などがありますが、それでは退職されてしまいます。新卒一括採用と画一的な社員研修、ジョブローテーションと下積みを前提とする適性を無視した配属では、外国人エンジニアも辞めたくなるでしょう。

 また、外国人をコスト削減の手段とする意識や、「日本流の仕事を教える」という上から目線は捨てましょう。一昔前のIT業界における外国人エンジニアの仕事は、「オフショア」という開発業務の一部を委託されたものでした。設計などの上流工程を日本で行い、プログラミングなどの下流工程を外国に委託してコスト削減を目指しましたが、コミュニケーション不足や指示の不備などで失敗に至ることも多くありました。

 プログラミングを「下流工程」と文字通り下に見て、あいまいな設計から「行間を読む」「察する」という日本人特有の文化を求めるのは無理があります。外国人エンジニアは労働力でも下請けでもなく、チームメイトであり仲間として迎え入れるべきです。

 プロ野球における同様の事例として、上田利治監督時代の阪急ブレーブス(現・オリックス・バファローズ)で活躍したブーマーも、後任の土井正三監督には「敬意を払わなかった」とコメントして、福岡ダイエーホークス(現・福岡ソフトバンクホークス)に移籍しました。分野は異なれどプロとしてのリスペクトが重要だと分かるエピソードです。

 こうした外国人エンジニアのキャリアプランに関する不安を解消するには、外国人がマネジャー以上の職務についていると効果的です。将来のキャリアアップへの不安を解消できるだけでなく、日本人以外のメンバーの声も聞いてもらえるという安心感につながります。一例としてはトヨタ自動車のギル・プラット氏(Executive Fellow)、楽天のタリア・マルティヌッセン氏(CTO)、マネックス証券のピーテル・フランケン氏(元CTO)などが要職を務めていました。

 また、マネジャーに日本人しかいないと、どうしてもコミュニケーションにギャップが生まれます。マネジャー以上の役職に外国人を据えるのが難しい場合は、海外で働いた経験やブリッジSEとしてオフショア開発に関わった経験がある人、英語を話せる日本人を招き入れても良いでしょう。

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