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AIがデジタルトランスフォーメーションの起爆剤に? “ミニDX”から始める企業変革よくわかる人工知能の基礎知識(2/4 ページ)

» 2020年05月29日 07時00分 公開
[小林啓倫ITmedia]

AIとDXの関係は?

 DXがそうした横断的・革新的な取り組みであるとした場合、AIはそれにどう関係しているのだろうか。

 AIを単なる技術の一つと捉えた場合、それはDXを構成する要素に過ぎないことになる。この理解は決して間違いではないが、AIはDXにおいて、もう少し重要な役割を果たすといえる。それはAI自体が、その成功のためにさまざまな領域を横断した取り組みを求める存在だからだ。

 現在主流となっている、機械学習を応用したAIでは、大量のデータに基づいてモデルの構築が行われる。そのデータを収集する技術として活用されるのが、モバイルやIoTといった他のデジタル技術だ。モデル構築には大きなコンピューティングリソースが要求されるため、クラウド環境が利用されることが多い。最近ではAI PaaSといって、AI開発・運用に特化したPaaSも登場している。ここまではシステム系の話だが、AIを的確・適正に運用するためには業務側の協力も欠かせない。AIに適切なデータが与えられているか、その判断結果がコンプライアンスに違反していないかといった管理が必要になり、さらに開発から運用までそれぞれの分野でAIに正しく対応できる「AI人材」を育成しなければならない。

 そしてAIの価値を最大限に引き出すためには、新しいビジネスモデルの検討が求められる。もちろん一定の業務をAIに肩代わりさせるだけでも、業務の省力化といった効果は得られる。しかし、例えば省力化した上で顧客にサービスを届ける時間を短縮する、人間には難しい精度や規模を実現する、時間や場所にしばられないサービス提供を実現する――などを行えるのがAIだ。そうした検討まで踏み込むのが理想であり、ある意味でAI導入に取り組むこと自体が、ミニDXプロジェクトといえる。

 またAIが、DXにおける多様なデジタル技術をつなぎ、総合的な価値を生み出す「扇の要」的な存在になるとの予想もある。

 下の図は、総務省の「平成30年度版情報通信白書」において、デジタルトランスフォーメーションの概念図として提示されたものだ。ここでも複数の技術やアプリケーション領域がつながることによって、「部分最適から全体最適へ」と価値が拡大する様子が描かれている。

デジタルトランスフォーメーション

 こうした全体最適を実現するためには、複数の領域を調整するモデレーターが必要だ。しかし単独でも規模が大きく、また大量のデータや判断が関係する領域を束ねることは、人間では難しい。しかしAIであれば、高度な判断を高速で行ってくれる。実際に、DXに成功したとして紹介される企業には、AIを巧みに活用し、複数の領域を統合することで新たな価値を生み出している例が少なくない。

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