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AIがデジタルトランスフォーメーションの起爆剤に? “ミニDX”から始める企業変革よくわかる人工知能の基礎知識(4/4 ページ)

» 2020年05月29日 07時00分 公開
[小林啓倫ITmedia]
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 USAAで新商品・新業務開発を担当し、AI活用を指揮しているケイシー・ロワイエ氏は、調査会社Cognilyticaが公開しているポッドキャストで、「USAAはこれまでのビジネスから大量のデータを保有しているものの、それにリアルタイムにアクセスできるように組織の壁を越えていくのに苦労した」と語っている。これはチャットbotに限らず、あらゆるAIプロジェクトにいえることだが、これまでの組織やビジネス構造に伴って生まれたデータ構造やデータ保管の仕組みを、AIアプリケーションを前提として最適化させるというのは至難の業だ。先端技術の導入に積極的なUSAAですら、この点に難しさを感じていたわけである。

 最終的にUSAAは組織的な変革も成功させ、画期的なチャットbotと窓口サービスも実現させた。それは単純なITプロジェクトではなく、まさにビジネスや組織のあり方も変えていくようなデジタルによる変革だったといえるだろう。

ミニDXのすすめ

 残念ながらさまざまな調査結果を見ると、日本の経営層は特に「DXは新しいシステム開発の一つであり、システム部に任せておけば良い」と考える傾向が強いようだ。そうした認識に直面し、理論や他社事例を示すだけでは変えられない場合には、領域や規模を限定してAIを導入し、何が課題となるかを可視化して経営層に提示するという劇薬的なアプローチも考えられるだろう。ミニDXとしてのAIの力を、有効に活用してほしい。

著者プロフィール:小林啓倫(こばやし あきひと)

経営コンサルタント。1973年東京都生まれ、獨協大学外国語学部卒、筑波大学大学院地域研究研究科修士課程修了。システムエンジニアとしてキャリアを積んだ後、米Babson CollegeにてMBAを取得。その後外資系コンサルティングファーム、国内ベンチャー企業などで活動。著書に『FinTechが変える! 金融×テクノロジーが生み出す新たなビジネス』(朝日新聞出版)、『IoTビジネスモデル革命』(朝日新聞出版)、訳書に『テトリス・エフェクト 世界を惑わせたゲーム』(ダン・アッカーマン著、白揚社)、『シンギュラリティ大学が教える 飛躍する方法』(サリム・イスマイル著、日経BP社)など多数。


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