このActive Bookは、Acorn創業者だったハウザー氏が創業した新しい会社である。ハウザー氏はOlivettiによる買収後に同社を去り、Active Book Companyという電子書籍(というか、電子書籍リーダーというのが正確か)の会社を立ち上げた。要するにKindleの超御先祖様であるが、このために省電力なCPUが必要になった訳だ。ここでARMプロセッサの目的が、「RISCを生かして高性能」から「RISCで得られる高性能を生かし、同じ性能をより低消費電力で」に切り替わった瞬間でもある。
Active Book Companyはその後AT&Tに買収され、AT&TのEO Personal Communicatorにつながることになる。あいにくとそのEOは、AT&Tが自社開発していたHobbitという独自のCISCプロセッサを使うことになったため、結果としてスタティック版ARM2はお蔵入りとなったが、これに目を付けたのがApple Computer(当時)のジョン・スカリーCEOである。もっと正確に言えば、スカリー氏が新しい形の情報端末のアイデアを出し、これを受けて当時Appleのラリー・テスラー氏がハウザー氏に渡りをつけ、ハウザー氏がまずスタティック版ARM2を紹介した。
ただこれでは、当時Appleが想定していた未来のNewtonの実現にはいろいろ不足だということで、ここからAppleとAcorn、VLSI Technologyの3社による新しいCPUの共同開発プロジェクトがスタートすることになる。
ところが、開発が進むにつれ、Acornが単独企業ではなくOlivettiの子会社であることが、いろいろと障害になりつつあった。そこでハウザー氏がいろいろと水面下で立ち回り、1990年にAcornのプロセッサ開発部門(わずか12人のエンジニア)がスピンアウトする形で独立企業になった。
もともとAcornはARMという名前でチップを製造していた訳だが、これはAcorn RISC Machineの略だった。ただスピンアウトにあたって、これをAdvanced RISC Machineに改称し、社名もこれを利用することになった。
同社はRISCベースのプロセッサのIP(知的財産)を提供、これをVLSI Technologyが製造し、Appleがこれを組み込むという分業体制が確立した訳だ。初代CEOはロビン・サクスビー卿である。この分業体制で、ARMがNewton向けに開発したのが、ARM6である(アーキテクチャはARMv3)。このARM6はAppleだけでなくAcorn Computerもまた採用したが、ただここから大きくは広がらなかった。
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