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» 2020年06月10日 19時16分 公開

「誹謗中傷ログを自動保存」 弁護士事務所が有名人向けサービス 仕組みに疑問の声、一時停止に

アトム法律事務所弁護士法人は、タレントや有名人などに対する中傷ツイートを自動保存し、発信者に対して警告文を送付するサービスを始めた。しかし、「各方面から『Twitter内での表現を萎縮させる』との意見が来た」として、一時的にサービスを停止している。

[井上輝一,ITmedia]

 「利用料0円でタレント・有名人を守ります」──アトム法律事務所弁護士法人はこのほど、タレントや有名人などに対する誹謗(ひぼう)中傷ツイートを自動保存し、発信者に対して警告文を送付するサービスを始めた。しかし、「各方面から『Twitter内での表現を萎縮させる』との意見が来た」として、一時的にサービスを停止している。

アトム法律事務所弁護士法人が開始した、中傷ツイートの自動保存サービス

 利用できるのは、「Twitterの認証済みバッジが付いているアカウント」「フォロワーが1万人以上いるタレントなどのアカウント」「その他、運営が個別に適切と判断したアカウント」に限られる。

 利用者は、同法人が公開したTwitterアプリに自身のTwitterアカウントを連携。中傷に当たるツイートのURLを同法人の公式サイトから送信すると、そのツイートがシステム側に自動保存されるという。

 当初の仕組みでは警告文の送付も自動で行うとしていたが、その後、弁護士が確認してから当該ツイートの発信者へ警告文を送るか判断すると修正した。警告文を送る場合、同法人のアカウントから@付きの公開ツイートで送信する。

発信者に対して送付する警告ツイートのサンプル

 同法人はシステムを作った理由として、「コスパがよくて効果的な法律サービスが存在しない」と説明する。「弁護士費用は数十万円〜とかかるのが一般的。全ての不当な誹謗中傷に高額な弁護士費用を支払ってまで対応するのは、現実的ではない」として、事故予防の観点から、弁護士団の名義で削除などを求める警告を出せるシステムを作ったとしている。

 一方で、Twitterユーザーからは当初のシステムに対し疑問の声も上がった。「(当初の)警告文を弁護士名義で自動送付できてしまうシステムは、いわゆる『非弁行為』(弁護士の資格を持たずに弁護士業を行う行為)や弁護士の名義貸しにならないか」というものだ。

 一般論として、訴える気がないのに「訴える」と相手に伝える行為は脅迫罪に問われる恐れもある。このシステムで相手方に送られる文章は「警告」「法的措置に移行することがある」といった内容を含むため、弁護士の判断を踏まえるならともかく、一般人が自分の判断で送れてしまうという当初のシステムには問題があるとの指摘もある。

 また、警告文を公開ツイートで送付する必要性にも疑問符が付く。1対1でやり取りできるダイレクトメッセージではなく公開ツイートとする理由について同法人は「周りのファンや関係者に対して、誹謗中傷の被害に遭っていることを伝え、その後の進捗などの情報を共有することができる」としていたが、逆に当該ツイートの発信者に対する中傷行為を助長し、表現を萎縮させる恐れもあるのではないか。

 ITmedia NEWSはこれらの疑問について同法人に取材を試みたが、「担当弁護士が終日不在」の上、「クレジット表記と金銭報酬がなければ取材は受けない」と回答した。

 同法人は10日、サービスの一時停止を自身のTwitterアカウントで発表。「Twitter内での表現を萎縮させる」という各方面からの意見を踏まえたとしている。警告文送付の審査の他にも、表現の萎縮を回避し、適切な議論が促進されるように警告文の文言を今後改善するとしている。

【修正履歴:2020年6月10日午後8時 一部表現を修正しました】



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