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» 2020年07月03日 09時52分 公開

東京タワーで“蝋人形”になった伝説のミュージシャンが問う、「ITはロックをコロナから救えるか」 (1/2)

ヴェルヴェット・アンダーグラウンド、ブライアン・イーノ、タンジェリン・ドリームなどと深い交流を持つ伝説的ミュージシャンがコロナ禍で動いた。

[Masataka Koduka,ITmedia]

 ロックミュージックとテクノロジーは互いに影響を与えつつ今日に至った。1960年代から現在まで活躍を続けている伝説的ミュージシャンはコロナ禍に立ち向かうためのライブストリーミングを主催した。

 伝説のジャーマンロックバンドに在籍し、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドのニコの最後のパートナーとしても知られ、半世紀以上、音楽界で活躍を続けるルッツ・グラフ・ウルブリッヒ氏にドイツ在住の著者がインタビューした。


 ロックダウン解除、とはいえ、ドイツ・ベルリンでも大きなホールでのコンサート・演劇公演は禁止された状況が依然として続いている。さて、6月13日、ドイツ・ベルリンの比較的大きなホール、ウーファ・ファブリックから「バーデナーレ」と称するライブストリーミングが配信された。

 このバーデナーレ主催者は、ルッツ・グラフ・ウルブリッヒ(公式Webページ)さん。1952年11月30日生まれで、現時点(2020年6月)で67歳のドイツ・ベルリン在住ミュージシャンだ。

 このウルブリッヒ氏、なんと2013年に閉館となった東京タワーの蝋人形館に蝋(ろう)人形として並んでいたり、ルー・リードやジョン・ケイルなどロック史を語る上で欠かせない才能を輩出した伝説のロックバンド、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドでボーカルをとったニコの最後のパートナーだったり、“テクノ・ハウスの始祖”と評価されるマニュエル・ゲッチングとアシュ・ラ・テンペルにてジャーマンロックの名作を録音していたり、90年代以降は、ベルリンの人気バンドで来日公演もした17ヒッピーズのメンバーであったりと、ロック/音楽ファンにとってとても重要な数々の歴史的事件を体験してきている人物だ。

 1967年からミュージシャンとして活動を始め、半世紀以上、ミュージシャンとして生き抜いてきたウルブリッヒ氏に、今回のストリーミング企画を契機として、「コロナ禍でもミュージシャンは生き残れるのか、ITはロックを救えるのか、ポストロックダウン世界でのミュージシャンの試み」について聞いた。

――「バーデナーレ」というストリーミングを開催した意図を教えてください。

ウルブリッヒ氏 バルデナーレのアイデアは、ベルリンのソングライターたちへの好奇心から生まれました。かつて「リュールのライブラウンジ」というコンサート企画を、ベルリンのホール(BKA、Wabeなど)で行って、1回の企画につき3〜4人のシンガーソングライターを紹介していました。モデレーター役を務めることで、アーティストたちと直に話してみたかったのです。

 劇場、ウーファ・ファブリックの美しい野外ステージは私の試みに最適と考え、第1回バーデナーレを企画しました。最初のバーデナーレのために、私はお気に入りのアーティストたち8組に出演を依頼し、みんな出演を快諾してくれたので幸せです。プロフェッショナルで、バラエティ、オリジナリティに富んだアーティストたちが30分間、演奏します。

photo バーデナーレのFacebookイベント。筆者もベーシストとして出演している

コロナ禍でもミュージシャンは生き残れるのか? ITはロックを救えるのか?

――あなたは1967年から、本当に長い間、音楽を演奏しています。67年から現代にかけて、ミュージシャンを取り巻く状況は変わったと思いますか? 私は、インターネットの登場で、ライブハウスに脚を向ける人口が減っている、と思っているのですが。

ウルブリッヒ氏 17ヒッピーズで、私は過去25年間、世界中のフェスティバルやドイツのコンサートで、大勢の聴衆の前で演奏しています。まず、文句は言えません。

 もちろん、67年とは対照的に、ラジオやインターネット、コンサートで、はるかに多くの音楽が流れています。競争は激しく、誰でもいつでもコンサートに行くような余裕がなくなってきています。そして確かに、一部の人々、特に若者たちはバンドを聴くよりレイブに行くことを好むのは事実です。

 私は今、コロナの後、その状況がどう変化するのかについて、興味があります。過去との決定的な違いは、全てが商業的であるということです。よりプロフェッショナルではある。しかし、60年代、音楽活動は即興的で、経済面はあまり問題ではありませんでした。

 今日、全てが計画的です。コンサートがスマートフォンで撮影されるので、ミスが永遠にネット上に残るので、何をするにも注意する必要があります。これは一般的に、ライブの即興性を阻害するかも知れません。

photo ニコとスペインで演奏するウルブリッヒ氏

――コロナ危機を、ミュージシャンはどのように乗り越えればいいのでしょうか? ITに音楽活動を救える可能性はあるでしょうか?

ウルブリッヒ氏 それはミュージシャン全員にとって、特にライブ演奏を必要とする人々にとって、興味深い問題です。ミュージシャンとしての私の収入の大部分は、コンサートに依存しているので、私も影響を受けています。冬、部屋に閉じこもっている時は、想像力も鈍るものです。先のことは分からないけど、今はあまり気にしない。ドイツでは本当に助けになった緊急援助助成金がありましたが、これで先の全ての損失を補填できるかどうかはかなり疑問です。

 しかし、素晴らしいことは、世界に送信できる作品を自宅で作成できるようになったことです。だから私はロックダウン中、自宅で「世界は止まる」という曲を作りました。妻がビデオを作成しました。全て自宅で始まり、全て専門的に行いました。これは素晴らしい機会です。

 また、アジテーション・フリーのメンバーは現在、バラバラな街に暮らしているのですが、毎週1回リモート会議を行って、新しい音楽を創造しようと動いています。現代のIT技術があるからこそできることで、それは素晴らしいことだと思います!

 もちろん、多くのミュージシャンが音楽を無料でオンライン配信しており、SpotifyやYouTubeなどのプラットフォームによって、失われつつある音楽の価値が、どんどん低下して行くのは、悪いことです。ミュージシャンとして生き残ることは難しい。

 コロナ禍ミュージシャンの試みとしては、タンジェリン・ドリームのトーステン・クォーシュニックによるライブシリーズ「behind closed doors with..」が興味深かったです。毎週月曜日と木曜日にライブストリームを放送しており、初めは無料配信だったのですが、その後BandcampとVimeoでの有料配信になりました。これは1つの可能性であり、ロックダウンによってコンサートのない時間でも楽しかったです。

photo タンジェリン・ドリームのトーステン・クォーシュニック「behind closed doors with..」におけるウルブリッヒ氏の演奏

話題は伝説的な音楽シーンから現代へ

 そして話題は当時の伝説的音楽シーン、そして現在に至るまでの話に及んでいった。

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