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» 2020年07月29日 10時15分 公開

新連載「3Dプリンタ買っちゃいました」:3万円を切る光造形3Dプリンタでテレワークを乗り切る

2万7999円の3Dプリンタ。しかもかつては手が出なかった光造形方式。テレワークを機に立体造形生活を始めてみました。

[松尾公也,ITmedia]

 かつては手が届かなかったものが、突然身近なものになる。ぼくの世代だと、そんなことがちょくちょく起きる。パーソナルコンピュータ、ワイヤレスモバイルデバイス、VRヘッドセット。最近だと3Dプリンタがそれだ。

 この連載は、その存在を知ってから30年を経て立体造形物を自分の手で工作できるようになった人間による、そそっかしい導入記だ。まずは、なぜ買うことになったのか。その経緯を紹介したい。

きっかけは特別定額給付金……の“オフライン”申請書

 コロナの給付金がそもそものきっかけだった。特別定額給付金の申込書をずっと放置していたのだが、そろそろ締め切りが近づいてくるかと心配になったので、必要な書類のコピーを取っておこうと考えた。うちにはオールインワンタイプのインクジェットプリンタがあるので、それを稼働させようと、ひさびさに電源をつなげてみた。テストプリントをしてみたのだが、文字がかすれて読めない。何度もクリーニングをして、新しいインクを買ってみたけれどもダメ。数日間を無駄にして、粗大ごみ行きが決まった。

 代わりになるプリンタを探そう。前回は数千円で入手できたから最近ならもっと安かろうと思ったら、予想と全然違う。高いし、そもそもモノがない。テレワーク需要のためか、オールインワンタイプだと、安いのは品切れで2、3万円のものしかない。そこまで頻繁に使うものでもないし、最近はコンビニプリントでも済ませられるので、ここは諦めることにした。

 じゃあ2Dじゃなくて、3Dのプリンタならどうよ、ということでAmazon.co.jpで調べてみたら、これも予想と全然違っていた。安いのだ。2019年にcheeroが3Dプリンタを出した辺りでは、完成品で5万円くらいが安い方だったのだが、今見ると、下は1万円台からある。そして何より、ここ30年くらい高根の花と考えていた方式の3Dプリンタが2万円台で買えることに気づいたのだ。

3Dプリンタの2方式、FDMとSLA

 3Dプリンタには大きく分けて2つの方式がある。多くの人が「これが3Dプリンタだよね」と認識しているのは、FDM(Fused Deposition Manufacturing)という方式のもので、一般的にはフィラメント式ともいわれる。糸巻きみたいなものに巻かれた素材(フィラメント)を、ノズルまで吸い込んで、そこで熱で溶かして定着させる。そのノズルがXY方向に動いて、1つの層が出来上がったらちょっとだけ上に(Z軸方向に)移動して、また印刷を始める。ビルを1階ずつ工事して組み立てていく感じで立体物が造形される。XYプロッタがZ軸方向に拡張された感じといえば通じる人がいるだろうか。

photo cheeroのFDM方式3Dプリンタ

 もう1つの方式は、SLA(Stereo Lithography Apparatus)、日本語では光造形方式と呼ばれる。これは、光硬化樹脂(レジン)の溶液が入ったタンク内で紫外線を照射し、これも1層ずつ定着させていく方式。ぼくが1980年代終わり頃にCG雑誌の編集をしていたころ、「まだ研究所レベルだけどこんなすごいのができてるんだ」と話を聞いていたものだ。今思えばそれはSLA方式の特許を取得したチャック・ハル博士らが起こした企業、3D Systemsのニュースだったのだろう。その頃、実用的な製品は数千万円くらいしていたのだろうか。VRヘッドセットやデータグローブも同じ時代に初期モデルが考案され、現代において数万円のコンシューマー製品となっているというのも面白い。

photo 3D Systemsの世界初の商用光造形プリンタ「SLA-1」

3Dプリンタが税込2万7999円

 そんなすごい製造装置が、2万円台で買える。レビュー評価が高く、YouTubeでの解説が上がっているものを見てみると、よさげなものがあった。中国・深センのメーカー、ELEGOOの「ELEGOO MARS」という光造形3Dプリンタが、2万7999円(税込)だ。

 「え、こんなに安いの?」「大丈夫なの?」「オールインワンタイプの2Dプリンタより安いじゃん!」

 安くできるのには理由があった。もともとは紫外線レーザーを照射して層を形成していたのだが、まずはDLP、次に液晶パネルという比較的安価な部品で紫外線をコントロールできるようになったので、低価格化が進んだのだ。この辺りの「安くできる仕組み」は、ビデオプロジェクターに近い。ちなみに1986年に取得された特許も既に切れている。ELEGOO MARSは1440×2560ピクセルの液晶パネルを使う方式で、160×150×68mmまでの造形が可能。十分だ。

photo ELEGOO MARS

 で、自分はこのELEGOO MARSを購入したのだが、他のメーカー(大半は中国)と共通の部品が多く、そこも低価格化のポイントなのだろう。ソフトウェア面でも、フリーウェアで多数のモデルがサポートされており、メーカーとしての負担が比較的少ないのではないだろうか。

 詳しい話は次回に持ち越すが、メカ的にも構造が単純で、移動するのは上下だけ。ケミカルな処理を除けばFDMよりも単純かもしれない。

 そんなこんなで出力した写真だけをお見せしよう。

photo サンプルデモの、rook(チェスの駒)。中に階段があったりと複雑な形状だがしっかり出力されている。文字のエンボスもちゃんと表示されている
photo 人物フィギュアを出力したもの。詳細は次回

 チェスの駒は開封した初日に、フィギュアは3日目に出力した。

 テレワークの良いところは、ずっと家にいるので、数時間かかる3Dプリントの様子をたまにチェックしながら仕事できるところ。ぼくの3Dプリンタ生活は、こんなふうにスタートしたのだ。

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