このコーナーでは、テクノロジーの最新研究を紹介するWebメディア「Seamless」を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。
北海道大学と神戸大学による研究チームが発表した「ウェアラブルコンピューティングにおける聴力自在化技術の提案」(PDFへのリンク)は、外界音を変換し、ユーザーが自在に自身の聴力を操作する技術だ。この技術を用いることで、外界音から聞きたい音だけを選択して聞くことができる。
人間の耳は、自らの意志では制御することが難しく、聞く音の取捨選択ができない。その上、超音波などの人間には聞こえない音も取得することができない。
研究チームは、マイクとスピーカーを搭載したイヤフォン型ウェアラブルデバイス(マイク付きワイヤレスイヤフォン)での利用を想定し、外界音から聞きたい音だけを聞ける技術でこの課題に挑戦する。
この新技術は、マイク付きイヤフォンのマイクで取得した外界音の周波数を操作し、変換後の音をスピーカーで出力することで、従来の聴力では聞こえなかった音の聴取や、不必要な音の削除を行う。
具体的には、取得した音を高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transform)によって周波数領域に変換し、 5種類の手法で操作する。次に、操作した周波数スペクトルを逆高速フーリエ変換(IFFT:Inverse Fast Fourier Transform) によって時間領域に変換する。これにより、ユーザーは希望する音をスピーカーから変換された状態で聴くことができ、周波数操作手法とその適用範囲をデバイス上で操作し、音を制御できる。
この技術を用いて何ができるのか。想定する7種類のアプリケーションを紹介する。
超音波ブレスレットで盗聴を妨害 シカゴ大など開発
口パクで音声入力、喉に小型センサーで 東大とソニーCSLが技術開発
振動、圧力、温冷、風を同時に体感 ウェアラブル端末「Haptiple」、豊田中研が開発Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR