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» 2020年08月06日 07時00分 公開

中国で普及する信用スコアは、なぜ日本で定着しない? 「Yahoo!スコア」終了に思うこと(3/3 ページ)

[山谷剛史,ITmedia]
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悪いイメージはぬぐえず

 しかしYahoo!スコアは、リリース当初、スコアの算出や利用をデフォルトで「オン」にしており、ユーザーからの同意を得ていなかったため、一気に批判を浴び、イメージが悪くなってしまった。

 その後は仕様を改善し、デフォルトで「オフ」にしたものの、悪いイメージはぬぐえなかった。ネットユーザーの間でYahoo!スコアの名前を出すと、まず「ああ、あの個人情報を勝手に使おうとしたところね」となったのではないか。イメージが悪化してしまい、利用したいと思うユーザーがいなくなり、結果としてYahoo!スコアのエコシステム自体を畳むことになったのだろう。

芝麻信用も完璧なサービスではない

 一方、中国の信用スコア・芝麻信用は非の打ち所がない素晴らしいサービスかというとそうでもない。芝麻信用の運営元は16年に、信用スコアが750点以上(最高点が950点)の男性だけがコメントを書き込める、OLと女子大生向けのSNSを開発し、大ひんしゅくを受けてサービスを終了させた。芝麻信用の親会社であるAnt Financialは過去に、ユーザーの個人情報の大規模な漏えい問題を起こしている。

 だからといって、芝麻信用の話を中国人としても「ああ、あの女尊男卑の会社ね」とか「Ant Financialは情報漏えいをしたし、Alipayは危ないよね」とはまず言わない。

 結局のところ日本のユーザーは、中国に比べて、1回のサービスのミスを根に持つ傾向があるのではないか。サービス提供側の企業も、サービスが批判を受けると、新しい企業と提携したり、サービスを定期的にPRしたりすることをやめがちだ。批判によって委縮するのか、リリースした時点で満足するのかは分からないが、ネットユーザーはこうしたサービスを使わなくなってしまう。

不満は水に流しては?

 一方、中国のネット業界は不祥事を起こそうが、空気を読まずに新しいサービスや製品を次々と出していく。例えばXiaomi(小米)は、日本に原子爆弾が投下されたことを想起させる、日本人を傷つけるようなPR動画を流し、炎上した。その動画は削除したものの、それ以降もPR動画を欠かさず流し、新製品を拡販しようとしている。

 Webサービスは、企業が継続的に運用し、更新や改善を重ねることで成長する。一度の失敗でユーザーがネガティブイメージを抱え続け、企業もそれを気にしているようでは、サービスを育てるのは難しい。

 不祥事が起きると文句の一つも言いたくなるのは分かる。だが、日本のWebサービスをよりよくするには、仕様の改善に合わせて不満を水に流し、ネガティブイメージを延々と抱え続けないほうがいいかもしれない。

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