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香料噴霧すれば火もまた涼し? 温冷覚を錯覚させる装置、シカゴ大が開発Innovative Tech

» 2020年08月12日 17時13分 公開
[山下裕毅ITmedia]

Innovative Tech:

このコーナーでは、テクノロジーの最新研究を紹介するWebメディア「Seamless」を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。

 米シカゴ大学の研究チームが開発した「Trigeminal-based Temperature Illusions」は、熱や冷気を発生させる機器を使わず、代わりに鼻に香りを噴霧することで温冷覚を錯覚させる触覚システムだ。

photo 噴霧装置をVRヘッドマウントディスプレイ前面に取り付け装着している様子

 この錯覚は、香りを鼻穴に直接噴霧し、三叉神経(痛覚、触覚、温冷覚など顔の感覚を脳に伝える神経)を刺激することで作り出す。刺激成分を微量でも吸い込むと温冷を感じる三叉神経の構造を利用することで、熱や冷気で皮膚を刺激せずに、香りだけで暖かさや清涼感を再現する。

 三叉神経を刺激する香りは、匂いから種類を判別できず、温度の変化を感じさせるだけの成分が理想と考え、無臭でありながら暖かさを再現できるトウガラシの活性成分カプサイシンと、清涼感を再現できるユーカリプトールを採用。チモールやペパーミントも利用可能だが、匂いから成分を特定されやすいため、カプサイシンとユーカリプトールを推奨している。

 噴霧装置はマイクロポンプやミスト散布機を組み合わせたスタンドアロン設計で、VRヘッドマウントディスプレイ前面に取り付ける。

photo 噴霧装置の外観

 プロトタイプは0.25Wの電力しか使用せず、他の温冷覚研究で用いられるペルチェ素子と比べて約20分の1の低消費電力で動作するため、デバイスの小型化が実現できた。

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