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ビデオ会議からキータイプ音をなくせ! 「タイプ音除去アプリ」を試す(2/2 ページ)

» 2020年09月04日 08時24分 公開
[西田宗千佳ITmedia]
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タイプ音がほとんど聞こえなくなるほど「効果は劇的」

 結果が知りたい方、お待たせしました。では、テストの結果をお聞きいただこう。以下のYouTubeで公開した動画を「音付きで」ご覧いただきたい。

 「無設定」「Krisp」「Clear Edge」の順に収録している。

 動画は3パートに分かれている。どれも話しながら、キーボードを派手にタイプし続けている点に留意して欲しい。

 最初はソフト的には何もしていないので、けっこう派手にキーボードの音が聞こえる。同じようにタイプしながら、「Krisp」「Clear Edge」の順にオンにしている。

 どちらも、コメント不要なくらいきれいにキーボードのタイプ音が消えているのにご注目いただきたい。わざと「よりタイプ音が大きいキーボード」でも試してみたが、こちらでもちゃんと消えていたので、効果は相当なもの、と断言できる。

 KripsとClear Edgeを比較すると、音質でも精度でもClear Edgeの方が良いように思える。Krispは全体に音が少しくぐもってしまう。また、状況によっては、Krispではほんのりキータイプ音が残るような場合でも、Clear Edgeでは音が消えていた。

 どちらのソフトでも、副作用がないわけではない。声は「少し強めに圧縮をかけた」ような、不自然さを感じるものになる。また、バックグラウンドで流れるごく小さな音量の音楽なども消えてしまうようだ。なので、音楽や動画配信を楽しむ時には、「スピーカー」でのノイズ消去をオフにした方がいい。

 また「処理を伴う」という性質上、ほんの少し遅延が大きい。今回数値では計測していないが、生音に比べ多少遅れる傾向のようであるのは聞き取れた。だが、Zoomのような「オンラインでの音声コミュニケーション」で使う場合、そもそもネットで音声を伝えるための遅延の方がずっと大きいので、このことが問題と感じられることは考えづらい。

今使うなら「Krisp」をお勧め、本命は「製品への組み込み」か

 というわけで、効果は絶大。筆者も最近は積極的に利用するようになった。

 ではどちらを使うか? これは正直な話、今は「Krisp」をお勧めする。Clear Edgeはメーカー側に直接交渉しないと使い続けることができないのだ。それに対してKrispは、ちゃんと有料プランもあるし、無料の場合も制約はあるが使い続けられる。WindowsとMacの両方に対応している点も、筆者的にはありがたい。

 Clear Edgeが「無償トライアル版」を公開しているにもかかわらず「PC用ソフトとして手軽に有料で使い続ける」仕組みがないのには理由がある。同社のビジネスモデルはあくまで「技術を他社に提供する」というB2Bモデルだからだ。実はKrispも同様。本命は個人向けではない。

 Krispはすでに、同社の技術を統合コミュニケーションサービス「Discord」に提供しており、「ノイズ抑制(ベータ)」として機能が搭載されている。

photo Discordの設定画面から。アプリそのものに組み込まれており、PCでもiOSでも、AndroidでもKrispのノイズキャンセルが使える

 この種の技術にはさまざまな企業が積極的に取り組んでおり、近いうちに当たり前の機能になるだろう、と予測している。

 例えば米Microsoftは、2020年3月、Microsoft Teamsに今後実装予定の機能として「ポテトチップスを食べる時に出る咀嚼(そしゃく)音や袋が立てる音をなくす」機能をアピールした。「いや会議中にポテチ食べるなよ」というツッコミはともかくとして、筆者もデモを見たが、きれいに消えている。

 この他にも同社は、屋外のノイズまみれの会話から「声だけを聞きやすくする」機能を発表済みだ。こうした機能を広く搭載していけば、「ノイズが邪魔になる」「ノイズ対策のために特別なマイクを使う」シーンは減っていくだろう。

 以下は、Microsoft 365の機能として公開された「Voice Enhance」機能に関するYouTube動画だ。

 PCで自ら設定するのは本命ではなく、おそらく各種サービスやアプリ、機器などに、この種の機能が搭載されていくのがこれからの姿だ。ヘッドフォンにおけるノイズキャンセルとは違う形で、処理能力を生かしたノイズキャンセルもしくは「特定音のエンハンス」という技術として、ここから急速に一般化してくるだろう。

 例えば、スマホのボイスレコーダーアプリにこの機能が搭載され、ノイズやタイプ音が消えた形で録音できるようになると便利ではないだろうか。あるいは、PCやスマホに標準で組み込まれ、音声通話品質を向上させる技術として活用されるとしたら?

 現状アプリが公開されているのは、そうした未来を売り込むためのテストケースのようなもの、と考えると分かりやすいだろうか。

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