このコーナーでは、テクノロジーの最新研究を紹介するWebメディア「Seamless」を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。
米コロラド大学ボルダー校の研究チームが開発する「RoomShift」は、ルームスケールVRでバーチャルシーンに合わせて椅子や机、壁などの家具をロボットで再配置し、座ったり寄りかかったりできる環境を作り出すシステムだ。ロボットが先回りしてさまざまな家具が存在するようにユーザーに錯覚させることもできる。
RoomShiftは、形状変化可能なロボット群で構成される。これらのロボットは、家具の下に潜り込み、持ち上げ、移動し、配置する。配置する場所やタイミングをバーチャルシーンに合わせ動的に行うことで、ユーザーは家具に触れる、座る、寄りかかる、などが可能となる。
倉庫で活用されている棚移動ロボットから着想を得て作られたこのロボットは、ロボット掃除機「Roomba Create 2」がベース。床面を自在に移動できるのに加え、本体上部に装備した2つのリニアアクチュエータと金属製ラックで作成した機械式リフトを垂直方向に30〜100cm伸縮可能だ。
縮小時に机や椅子の下に潜り込み、伸ばして持ち上げ、必要な場所に移動し、また縮小する。机や椅子を配置し終わると、ロボットが支える必要がなくなるため、椅子に座ってもロボット自体には負担がかからない。
最大荷重は22kgと、カスタマイズ前のルンバより13kg増加している点もポイントだ。
各ロボットを正確に制御するため、プレイエリア10×10mをカバーする20台のIRカメラ(Qualisys Miqus 5)を備えた光学追跡システムを導入し、ロボットとオブジェクトに取り付けたマーカーによって6自由度(DoF)で追跡する。オブジェクトの高さは、事前に登録しておき、機械式リフトに取り付けたマーカーからの傾きで高さを推定し、伸縮距離を計算する。
実用例としては、VRプレイヤーが歩き回るのに合わせてオブジェクトが移動して壁が広がっているように見せる、小さなテーブルをユーザーの動きに合わせて移動させて大きなテーブルが存在するよう錯覚させる、テレポート先の状態を再構築する、などが挙げられる。
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