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ウイルスには“ワクチン注射” 記録に残らない「Webスキミング攻撃」の可視化と対策の最前線「見えないWeb攻撃」──情報漏えい対策の盲点(2/2 ページ)

» 2020年09月18日 12時00分 公開
[中西一博ITmedia]
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 そこで考えられたのが、こうした“JavaScriptスキマー”をWebブラウザ内で検出するためのJavaScriptをWebコンテンツに付加して配信するという、米Akamai Technologiesなどが提供する方法だ。これは病原体に対する「ワクチン注射」に似ている。抽入された検査スクリプトは、ブラウザ内に読み込まれたJavaScriptの不正なふるまいや脆弱性を監視するとともに、危険なサイトとの通信をリアルタイムで検知してサイト管理者に報告する。Webサイト自身のコンテンツだけでなく、参照されたサードパーティースクリプトが集まるブラウザの中でまとめて検査し、もちろん不正なプログラムコードの実行も阻止できる。サイト運用者の責任で、Webサイトの利用者全員をWebスキミングから保護できることも特長だ。

検査用のJavaScriptをCDNでコンテンツ配信時に注入

 これらのJavaScriptを自動検査するソリューションを、Webサイトの多層防御の仕組みに追加することで、脆弱性や改ざんの可能性のあるスクリプトを可視化できる。「スクリプトが不要なデータを読もうとしていた」などのリスクが具体的に分かれば、該当するスクリプトを利用している部門が速やかに利用停止の判断を下せる。ビジネス上の要件とセキュリティのバランスを取ったスクリプトの運用にもつながるだろう。

進化を続けるWebスキミングに対抗するには

 JavaScriptによるWebスキミングの脅威は、かつて世界中で大流行したマルウェア「Conficker ワーム」で使われた検知回避の仕組みを取り込むなど、今もまさに急速な進化を続けている。北朝鮮政府の関与が指摘されるハッカー集団「ラザルス」も、この分野で活動しているとの分析もある。

 Webスキミングが狙う情報は、クレジット決済だけではない。Webを通して扱われている幅広い個人情報や機密情報が、攻撃技術の進歩によって無防備にネットにさらされている状態を想像してほしい。特に顧客や取引先との接点をWeb上に構築している企業や組織は、警戒レベルを一段上げてJavaScriptの安全対策に真剣に向き合う必要がある。

 クレジットカード被害については、消費者側でも月ごとのカード明細の確認などで自衛を心掛けたい。その際、窃取したカード情報を用いた不正購買は、サイトで情報を窃取されてから数カ月から半年くらいのタイムラグをおいて、別のサイトで行われることもあるので注意が必要だ。不審な点を見つけたら、カード会社に連絡しよう。

 外出自粛下で、便利なオンライン通販やデリバリー、サブスクリプション制のサービスに新規登録し、カード決済している人も多いだろう。経済が動くところで情報が動き、それを求めてサイバー犯罪も集中する。社会変容のすきをつく「見えない攻撃」を見分けられる目を企業、消費者ともに養っていきたい。

 次回の記事では、いま注目を集めているリバースブルートフォースやパスワードスプレー攻撃にも用いられる「botによる見えない不正ログイン」の実態と、攻撃増加の背景についてレポートする。

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