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「あの書類、どこやった?」AIが10万の書類から候補を提案 企業向け検索ツールが登場第1回 AI・人工知能EXPO【秋】

» 2020年10月29日 18時50分 公開
[石井徹ITmedia]

 会社の倉庫に大量に埋もれる書類の山は、実は宝の山かもしれない。ITサービスなどを手掛ける図研プリサイト(横浜市)は、AIの力で膨大な書類から新たな知見を発掘できるサービスを展開している。「第1回 AI・人工知能EXPO【秋】」(幕張メッセ)に出展された同社のブースを取材した。

photo AI・人工知能EXPOの図研プリサイトブース

 同社の「Knowledge Explorer」は、大企業のサーバに蓄積された文書をAIでインデックス化する、企業向けの検索エンジンだ。10万ファイル規模の書類を、社内サーバから自動で取得し、文書を解析して重要キーワードごとに分類する。

 このサービスのスマートな点は、「提案型」だということ。ユーザーが作成、閲覧している文書をリアルタイムで分析し、関連性の高い社内ドキュメントがあればプッシュ通知で知らせる。その内容は「閲覧中の文書と近い内容で、違う知見が含まれている文書」が優先して表示されるようになっている。例えばスマートフォンを設計している企業であれば、スマホの説明に関連してリチウムイオンバッテリーの仕様説明などが提案される。

photo 読んでいる文書に近い結果を通知で提案する
photo 提案された候補に関連する重要語句を抽出。Web検索エンジンのようにサマリーも表示される

 担当者が退職し、ノウハウの伝承が途絶えている場合にも、過去の文書が残っていれば、提案機能を通してスムーズに活用できるというわけだ。ユーザーとしてはWordやPowerPointで書類を作成しているだけで類似の書類が提案されるため、スムーズに利用しやすい。

 また、インデックス化の対象には官公庁の公開資料など、外部から取得した文書も指定できる。規制や政令などを取得対象に含めることで、最新のデータを探さずとも参照できるようになる。

 実はKnowledge Explorerは、サービス開始当初はもともとAIを利用していないサービスだった。同社の尾関将社長はAI技術の導入によって大幅に性能が向上したと語る。

 「2014年にサービスを始めた当初は、古典的な統計解析からスタートしていたため、顧客のニーズにマッチしていない提案をすることもあった。18年にAIベンチャーのギリアと提携し、AIによる重要語彙抽出機能を導入したため、一気に検索結果の精度が向上した。そこから引き合いが増え、現在は100社ほどが顧客になっている」(尾関氏)

 顧客には製造業が多く、Knowledge Explorerの利用者も主に大企業だ。展示では、寺岡精工や本田技術研究所、大鵬薬品などの事例を紹介していた。

 直近では感染症予防で在宅勤務を選ぶ企業が多いことから、テレワークに適したツールとして注目を集めているという。

 「オフィスで書類を探したいとき、『この書類、どこにある?』と知っていそうな人に聞くことも多いだろう。テレワークではそのちょっとした質問がしづらい雰囲気もある。そうした事情からKnowledge Explorerの提案機能を活用するニーズが増加しているという実感がある」(尾関氏)

photo 能動的な検索も可能

 ライセンス費用は360万円から。インデックスする書類の数や同時アクセスするユーザー数に応じて料金がかかる。

 大企業の適切な組織運営の中で、必要な情報共有が必ずしも効率的に行われるとは限らない。AIの力を自然な形で実装し、情報活用を支援するKnowledge ExplorerはDXの一つの手法として興味深い事例といえるだろう。

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