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「カミオカンデ」の生みの親、小柴昌俊さん死去 ニュートリノ観測でノーベル物理学賞など功績

» 2020年11月13日 13時31分 公開
[ITmedia]

 素粒子の一つである「ニュートリノ」の観測に成功し、ノーベル物理学賞を2002年に受賞した東京大学の小柴昌俊特別栄誉教授が、11月12日に老衰のため都内の病院で亡くなったと、NHKなどが伝えた。94歳だった。

東京大学の小柴昌俊特別栄誉教授(2002年ノーベル物理学賞受賞時、ノーベル財団のページより)

 小柴さんは東京大学を卒業し、渡米してPh.D.(博士号)取得の後に帰国。東京大学に戻り、理学部教授となってから、高エネルギー物理学実験施設(本郷キャンパス)やカミオカンデ(岐阜県神岡鉱山跡)などを設置した。

 高エネルギー物理学実験施設(現素粒子物理国際センター)での実験では、陽子や中性子などを構成する素粒子のクォーク同士を結び付ける作用を持つ「グルーオン」を発見した。カミオカンデでは、大マゼラン星雲の超新星爆発で生まれた太陽系外のニュートリノを、1987年に世界で初めて観測した。

 ニュートリノは電気的に中性であることから他の物質とほとんど反応せず、「幽霊のような粒子」ともいわれる。しかしニュートリノは宇宙から大量に降り注いでいるため、まれに物質と衝突することもある。カミオカンデは陽子崩壊という現象を観測する目的で、巨大な地下水槽に光電子増倍管という検出器を1000本配置していたため、太陽系外からのニュートリノを偶発的に捉えられたという。ここから、ニュートリノ観測により天文現象を研究する「ニュートリノ天文学」という新しい学問が生まれた。

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