ITmedia NEWS > 科学・テクノロジー >
ニュース
» 2020年02月26日 17時55分 公開

重力波望遠鏡「KAGRA」、観測開始 “宇宙誕生の謎”解明の手掛かりに

東京大学宇宙線研究所などが共同プロジェクトを進めている、重力波望遠鏡「KAGRA」(かぐら)での観測が始まった。欧米の重力波望遠鏡とともに重力波の直接観測を目指す。

[井上輝一,ITmedia]

 東京大学宇宙線研究所などが共同プロジェクトで進めている、大型低温重力波望遠鏡「KAGRA」(かぐら)での観測が2月25日に始まった。岐阜県・池ノ山(旧神岡鉱山)の地下200mに建設した一辺3kmの検出器で、重力波の直接観測を目指す。

大型低温重力波望遠鏡KAGRAのアームトンネル(国立天文台より)

 重力波は、アインシュタインの提唱する「一般相対性理論」から導き出された、「時空の歪み」が波となって光の速度で伝わる現象。検出可能な重力波は「超新星爆発」や、ブラックホールや中性子星の連星の合体などの激しい天体現象などから発生するとされる。重力波の観測から得られた情報は、宇宙の膨張や宇宙誕生の謎などの解明の手掛かりになるとされている。

初期宇宙で発生した重力波を直接観測できる可能性も

 重力波が地球に到達した際にはわずかに空間が歪むが、その変化は地球から太陽までの距離(約1.5億km)が水素原子1つ分(約0.1nm)変わる程度の極めて微小なもの。これを検出するために、KAGRAのプロジェクトでは光とハーフミラーを用いた「レーザー干渉計」という検出器を用意した。

KAGRAで用いるレーザー干渉計の概念図

 KAGRAは「望遠鏡」という言葉から一般的に想像できる天体(光学)望遠鏡や電波望遠鏡とは異なり、レーザー光とハーフミラー(ビームスプリッター)を用いて“距離の差”を計測する。レーザーの発振器から放出された光は斜め45度に設置されたハーフミラーを通り、半分は直角に反射、もう半分は透過する。それぞれの光は3km先にある鏡で反射し、ハーフミラーに戻ってくる。2つの光はハーフミラーで「干渉」を起こすため、光検出器でその干渉縞(模様)を計測すれば光路長の小さな変化を検出できるという仕組みだ。

KAGRAがある旧神岡鉱山

 KAGRAは検出精度を上げるため、誤差の原因となる振動の少ない旧神岡鉱山の地下200mに建設。熱によるノイズも抑えるために、用いる鏡を約マイナス250度まで冷却する。鏡には光学特性に優れたサファイアを使用している。3kmの光路長に関しては欧米の検出器と同程度だが、これらの条件は日本独自だという。旧神岡鉱山は、素粒子「ニュートリノ」を捉える検出器「カミオカンデ」などの建設地でもある。

 日本では観測が始まったばかりだが、既に米国では2015年にブラックホール合体時の重力波を検出。17年には欧米の共同研究で、中性子星の連星から発せされた重力波を観測している。欧米の検出器にさらにKAGRAが加わり、共同で検出を行うことでさらなる発見があると期待されている。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.