ヘルスケア用品を開発・販売するタニタは、自由な働き方を希望する社員に対して、タニタをいったん“退社”させ、個人事業主(フリーランス)として業務委託契約を結んだ上で、社員時代と同じ業務を続けてもらう――という人事制度を2017年に導入している。
この制度については、「時間が自由になり副業もしやすく、自由な働き方を支援する画期的な仕組みだ」と評価する意見と、「会社が社員の保護を放棄したいだけでは」「長時間労働を正当化する制度では」など批判する意見があり、以前から賛否両論が出ていた。
11月11日、電通が似た制度の導入を発表したことで、その議論が再燃している。
そんな中、“ゆるい”企業公式アカウントとして人気のタニタのTwitterを長年運用してきた“中の人”が、社員を辞めて個人事業主として働いているとツイートしたことが、改めて注目を集めている。
タニタの中の人は17年、新制度の一期生としてタニタを辞め、個人事業主になった。同氏は「タニタの『個人事業主への移行』は強制的にやらさせるわけではなく、本人の意思で移行します。また年齢制限もありません」とTwitterで説明している。
タニタの中の人は、個人事業主に移行して良かった点として「何より『生き方』を深く考えるようになった」ことを挙げる。また、「私は、このほうが働きやすい」と感じているという。
一方で、電通が11日に発表したのは、「ライフシフトプラットフォーム」という制度だ。
これは、40歳以上60歳未満の“ミドル社員”が対象。対象者は電通を退職し、電通が出資する新会社「ニューホライズンコレクティブ合同会社」と業務委託契約を結ぶ。従来の電通の仕事を引き継ぎつつ、副業などにもチャレンジできるが、契約は10年まで。固定報酬は段階的に下がっていき、仕事を通じて出した利益に応じて支払われるインセンティブ報酬の割合が高くなっていく。電通はこの制度で、230人の早期退職を予定している。詳細はWebサイトに掲載された資料で確認できる。
電通の新制度は「体のいいリストラではないか」との批判が強い。タニタの中の人は、電通という社名には触れず、あくまで自社の話として、こういった制度について「正直にいうと、普通に考えたら疑う気持ちもわかる」と述べつつ、「この仕組みがタニタで成立しているのは『会社と個人の間でのお互いの信頼』があるからだと思います」「この働き方を理解してくれる在籍社員や上長の存在も大きい」などと述べている。
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