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ヤマハのリモート応援システム「Remote Cheerer」がもたらした成果とは? スポーツ関係者が語る現状と課題(2/2 ページ)

» 2020年12月03日 07時00分 公開
[周藤瞳美ITmedia]
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業界の維持・発展に向けては課題も

 ただし、業界の維持と発展に向けては課題も残っている。従来のプロサッカー界のビジネスモデルは、広告料収入、入場料収入、飲食・物販収入が柱であり、スタジアムへの来場が前提となっていた。コロナ禍で集客が厳しくなった今では、これらに頼るのは難しい。そこで今後は、単にリモートでファンを盛り上げるだけでなく、何らかの形で収益を生み出すことが求められる。

 この点について、福島ユナイテッドFCの井上敦史氏(取締役 営業部長)は「Remote Cheererの画面にバナーを掲示し、(試合の中継画面に)福島県産品の通販サイトへのリンクを貼るなどすれば、(ファンと)地域とのつながりもつくれるのでは」と、ECとの連携などに期待を寄せた。

 また、ジュビロの柳原氏は、コロナ禍の影響によって新たなファンを増やすことが難しくなっていることも、経営上の課題だと指摘。「新たなファンづくりについても考えなければ、クラブの存続にも関わる」と危機感を示し、「リアルの場ではなく、バーチャルの中でいかにコミュニティーをつくり、これまでとは異なる観戦の仕方を提案できるかが重要になる」と、オンラインでサポーター同士をつなげる取り組みに意欲を見せた。

悪役レスラーに“遠隔ブーイング” 他競技でも活用進む

 Remote CheererはJリーグ以外のスポーツ業界でも活用が進んでいる。プロ野球チームの阪神タイガースはRemote Cheererをカスタマイズし、ファンがスマホを振ると、応援バットを打ち鳴らす音を球場に届ける取り組みを行った。プロレス団体・新日本プロレスリングでは、ファンが離れた場所からRemote Cheererを活用し、悪役レスラーなどにブーイングの声を送れる企画を実施した。

photo Remote Cheererの仕組み

 Remote Cheererの開発責任者である ヤマハの岩田貴裕氏(SoundUDグループ主事/SoundUD推進コンソーシアム 部会長)は、これらの施策の背景について「さまざまなプロスポーツ団体の方と話したが、観戦スタイルはそれぞれ異なれど、ファンやサポーターの思いを選手や会場に届けたいというニーズは共通していた」と明かす。

実は1年以上前から開発

 岩田氏によれば、同サービスの開発は、実は1年以上前から進めていたという。本来は、入院や子育てなどが理由で会場に足を運べない人向けのサービスとして企画していたが、コロナ禍によって多くのスポーツ業界から引き合いがあったことから、会場に声援を届ける機能にフォーカスすることで時期を早めてリリースした。

 今後は、コロナ禍でのスポーツ観戦を盛り上げるだけでなく、コロナ禍が収束した場合でも会場で観戦できない人を支援できるように、Remote Cheererの開発を継続していくという。

 「アフターコロナの世界では、会場で声援を送る体験は戻るはず。それでも、さまざまな事情で会場に行けない人はいるだろう。そうした人たちがRemote Cheererを使って、会場にいる人と同じように声援を送れるようにしたい。また、リモートでさまざまな人たちとのつながりを生み出せるプラットフォームにもしていきたい」(岩田氏)

photo 「CEATEC 2020 ONLINE」の講演に登壇した面々
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