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Googleを解雇されたAI倫理研究者が指摘していた「大規模言語モデル」の危険性Googleさん(1/2 ページ)

» 2020年12月07日 18時37分 公開
[佐藤由紀子ITmedia]

 先週の金曜日、いつも巡回している米国のIT系メディアがいっせいに、GoogleのAI部門、Google AIのEthical Artificial Intelligence(倫理的AI)チーム共同リーダー、ティムニット・ゲブルさんがGoogleをクビになったと報じました。

 ゲブルさんが2日の夜、自らのTwitterで、Googleがいきなり自分をクビにしたとツイートしたのです。

 ゲブルさんは、AI研究分野では著名で尊敬されている研究者。黒人で女性。かつてMicrosoft Research在籍中、今の顔認識は学習データが白人男性の顔に偏っているので肌の色が白くないと認識率が下がるという有名な論文を共著で発表しました。著者名は覚えていなかったけれど、私もこの論文(の記事)は印象に残っていました。

 timnit Microsoft Research時代にブルームバーグの番組でAIのバイアスについて語るティムニット・ゲブルさん(2018年3月のYouTubeより)

 Googleさんはこれまでも、セクハラやパワハラで何度も従業員と衝突し、メディアに取り上げられてきました。大きいところでは、2018年11月1日の世界規模のデモや、昨年末の解雇された元従業員による提訴など。後者については12月2日にお役所(NLRB)が、Googleが解雇前に従業員のカレンダーをチェックしたのは米労働法違反だとして提訴(リンク先は訴状のPDF)しています。

 ゲブルさんのケースを彼女の同僚へのメールツイートでざっくり要約すると、ゲブルさんが社内外の研究者と共同で書いた論文を公開前に社内レビュー申請した(そういう規則になっているので)ところ、2カ月なしのつぶてだった後、感謝祭の休暇の1週間前になって、なぞのミーティング予定が社内用Googleカレンダーに入り、行ってみると上司の上司が理由を説明せずに「論文は撤回して。これは決定事項だから」と言ったそうな。

 ゲブルさんは、撤回してもいいけれど、その理由と、誰がそうしろと言ったのかを教えてほしいと提案しましたが拒否され、がっくりして社内メールで複数の同僚に何が起きたかを説明したところ、「どうやら私の上司の上司が私の上司に私の辞任を受け入れたというメールを送ったようだ。私は辞任した覚えはなく、休暇から帰ったら返事をすると言ったのだが、彼女が私のために(勝手に)決めてくれたようだ」。


 もともとダイバーシティ問題で発言している人だし、著名人なので、この話はたちまちメディアやSNSで広まりました。

 Google AIの偉い人(白人男性)のジェフ・ディーンさん(ゲブルさんの上司の上司。昨年来日してGoogleのAI倫理について説明してくれた人)は「なんか世間で騒ぎになっちゃったけど、誤解もあるので説明します」と従業員宛に釈明メールを配信(これも当然ながら外部に流出しています)。

 jeff 2019年7月来日時のジェフ・ディーンさん。物静かにAI倫理について語ってくれました
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