ITmedia NEWS > 企業・業界動向 >
ITmedia AI+ AI活用のいまが分かる

AIブームは完全終了? コロナ対策でDXは躍進 2020年のAI業界を振り返るマスクド・アナライズのAIベンチャー場外乱闘!(2/3 ページ)

» 2020年12月17日 17時30分 公開

考察:AIブームは「完全終了」に?

 こうして2020年を振り返ると、AIに関する言及が少ないことに気付きます。本記事のために今年一年分のAI関連ニュースをチェックしましたが、IT業界や社会のトレンドは確実にDXに移行しています。

 もちろんAIの研究は着実に進んでいますが、画期的な技術進歩や新たな製品が話題に挙がることは少なくなりました。

 トレンドサイクルのいわゆる「幻滅期」に入ったといえるでしょう。現時点におけるAIの限界を示すエピソードとして、モーニングに掲載された漫画「ぱいどん」が挙げられます。

 これは人工知能によって手塚治虫先生の新作漫画を生み出すプロジェクトでしたが、当初の「AIによって手塚先生をよみがえらせる」という目標は「創作を支援するAI」に変わりました。結果としてAIは、手塚先生の作品を学んでキャラクターとストーリーの原案を作るにとどまり、人間が大幅に手を入れて作品に仕上げたものが発表されたのです。

 これは数年前の「AIが人間を越える」的な疑問に対する、一つの回答といえるでしょう(漫画自体は興味深い内容で面白かったです)。

AIは使って当たり前 評価軸は成果に

 2020年の傾向としてはAIの限界に挑戦することよりも、AIが現実社会で“それなりの予算と手間”で役立つことが評価される事例が増えています。

 日常生活でもセルフレジの自動読み取り、書類の文字認識、人混みの検知や検温など、省力化やコロナ対策に使えるAIが導入されました。仕事でも打ち合わせ、面接、営業、接客のオンライン化が進めば、会話音声などのデータを取得して、議事録が自動作成や営業トークの改善にもつながるでしょう。

 特に自然言語処理に関する精度向上と導入事例の増加により、問い合わせの自動応答、誹謗中傷などの監視、AI-OCRによるペーパーレス化なども見られます。数年前は過度に期待されてしまう分、蓋を開けてみれば期待外れという声もありましたが、現在ではノウハウが蓄積されて、さまざまな場面で役立っています。

 製造や物流、小売、医療など、特定業種ごとに細分化したAI活用が進み、「AIだから何でもできる」ではなく、必要な技術や場面を選んで活躍する「適材適所」が進みました。

 これに合わせて、AIとなじみが薄かった行政、農業、社会インフラなどの分野でも導入事例が増えています。

 人材教育の観点では、官公庁や大学などがネット上でトレーニングやカリキュラムを無償提供して、場所を問わずAI・データサイエンスを学べるようになりました。

 開発環境でもGUIツールやノーコードが増えて、AI開発の間口を広める取り組みが進んでいます。

 これまで関心が薄かった地方企業でも注目が高まり、地方発のAIスタートアップなどによる導入活用事例が増えたのも今年の特徴です。

 こうした一連の流れで、従来の「AIを導入したから偉い」「AIを使ってるからすごい」という広報・マーケティング的な側面ではなく、「AIを使いこなして成果を出す」という実績を考える風潮になってきました。言い換えれば、AIが“特別なもの”から“当たり前”になってきたのが2020年といえます。

AIは特別なものではない

社会にAIは定着したか

 では第三次AIブームを経たことで、社会にAIは定着したのでしょうか。

 残念ながら、まだその域には達していません。要因としては、「日本における失敗は、本人だけでなく社会的にも大きな影響を及ぼす」ことが挙げられます。

 多目的トイレを不適切な目的で利用した芸能人は姿を消し、100日後には肉食性で水中生活に適応した爬虫類だけでなくコンテンツごと死んでしまい、障害を起こして取引を1日停止させた社長は辞任するなど、1つの失敗で社会的に大きな制裁を受けた事例は多々あります。

 普通の会社員とて、AI導入活用プロジェクトで失敗すれば出世コースから外れるわけで、リスクを追ってでも挑戦する人は限られます。

 そこでAI導入や活用で失敗しない方法を考えましょう。これも今年のトレンドを見れば分かります。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.