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N95マスクの再利用法、東大の研究所が開発 静電気をリチャージ

» 2020年12月18日 12時22分 公開
[ITmedia]

 東京大学生産技術研究所は12月17日、洗った後の「N95マスク」の静電気をリチャージすることで、再利用する手法を開発したと発表した。100キロボルト前後の高電圧を発生させられ、実際に触ることで静電気を体験できる安価で安全な装置「ヴァンデグラフ起電機」を活用した。

画像 ニュースリリースより

 新型コロナウイルス感染症病棟などで使われているN95マスクは、主原料のポリプロピレンマイクロファイバーに帯電した静電気で飛沫をとらえてウイルスをフィルターする仕組みだが、世界中の医療機関で不足しており、再利用方法が検討されてきた。

 一般的なウイルス不活化手法は、アルコールの噴霧や洗浄、煮沸、高温高圧下での除菌(オートクレーブ)などがあるが、どれも静電気を減少させフィルター効果を低下させてしまうため、そのままでは使えなかった。

 今回、研究グループは、一度失われたN95マスクの静電気を、科学博物館などによくある安価な装置「ヴァンデグラフ起電機」を使ってリチャージした。

 ヴァンデグラフ起電機は、モーターと大小の金属の球が内蔵された装置。モーターがベルトを回すことで摩擦が起きて静電気が発生し、大きな金属の球に負の電荷が、小さな金属の球に正の電荷がたまる。

 この2つの球の間にマスクを挟み放電させることで、静電気をマスクに移すことに成功。一度はほぼ完全に失われたマスクの静電気が復活したという。

 煮沸消毒したマスクは変形してしまうなど課題は残っているが、「この発見により安全、安価にN95マスクを再利用する方法が確立できる可能性がある」としている。

 ポリプロピレンマイクロファイバーは、空気清浄機など他のさまざまな製品にも使われている。今後は、ヴァンデグラフ起電機を用いたポリプロピレン・マイクロファイバーの再利用手法をマスク以外の分野にも応用し、素材の再利用を促す技術を開発・提供したいとしている。

 研究成果は、12月17日に学術誌「Soft Matter」に掲載された。

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