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LINEフル活用で「ahamo」に対抗 ソフトバンクの「20GB・2980円」プランの戦略とは?

» 2020年12月22日 16時00分 公開
[濱口翔太郎ITmedia]

 NTTドコモが、月額料金が2980円(税別、以下同)で月間データ通信容量が20GBの新プラン「ahamo」を発表して以降、通信業界では携帯電話料金の“値下げ合戦”が加速している。ソフトバンクが12月22日に発表した新プランは、月額料金・月間データ容量ともにahamoと全く同じ。オンライン限定で契約やサポートを受け付ける点も一緒だった。

 ドコモの動きに追随していることは明白で、ソフトバンクの榛葉淳副社長は同日開いた発表会で「私たちの業界は競争が激しい。最終的な意思決定の際には競合の動向を意識している」と包み隠さず話した。

photo ソフトバンクが発表した新プランの一覧

 新プランの名称は未定。「ソフトバンク」「Y!mobile」に次ぐMNOサービスの新ブランドから2021年3月に提供する予定だが、ブランド名の発表はまだ先になるという。発表会で明かされたのは、新ブランドのコンセプトが「SoftBank on LINE」(ソフトバンクオンライン)になることのみ。だがこの名称に、ahamoと差別化するためのポイントが示されている。

経営統合するLINEのシナジーをフル活用

 それは、ソフトバンク傘下のZホールディングスと21年3月に経営統合するLINEのサービスと顧客基盤をフル活用するということだ。具体的には、新プランの月間データ容量は20GBだが、コミュニケーションアプリ「LINE」のデータ通信はカウントしない。契約手続きはLINEのアプリ上でも受け付ける。

 現時点でドコモのahamoにカウントフリーの特典はなく、契約手続きは公式サイトなどで受け付けている。ソフトバンクはこの違いに突破口を見いだしているようで、榛葉副社長は「LINEは8600万人が毎月使っていて、全世代に支持されている。中でもデジタルネイティブ世代の20〜30代は毎日使っている。このLINEが使い放題というのが特徴だ」と説明。

 オンラインでの契約手続きでもLINEに優位性があるとし「人によるサポートがなく、画面を見て判断する上ではインタフェースが大切。身近に使われているLINEのアプリから申し込みができるのは利便性が高い」と強調した。

photo 新プランではLINEをフル活用する

 ドコモの井伊基之社長も、ahamoの発表会見ではデジタルネイティブ世代に向けたプランであることを強調し、企画に携わった若手社員を登壇させる力の入れようだった。だがソフトバンクはLINEとの親和性を武器に、若手ユーザーの獲得競争でドコモに真っ向勝負を挑む考えのようだ。

「LINEモバイル」は受け付け停止、ブランディングを明確に

 なおソフトバンクは、MNOサービスを提供する新ブランドの立ち上げに伴って、MVNOサービス「LINEモバイル」を提供している同名の子会社を100%子会社化か吸収合併する方向で検討中(現在の出資比率はソフトバンクが51%、LINEが49%)。LINEモバイルの提供は今後も継続するが、時期をみて新規契約の受け付けを終える方針だ。

 従来は、ソフトバンクとY!mobileにLINEモバイルを加えた3ブランド制を敷いてきたが、この“第三のブランド”を新ブランドに置き換える。同時に「ソフトバンクは大容量」「Y!mobileは小〜中容量」「新ブランドはオンライン専用」というすみ分けを明確にし、今後はそれぞれで付加価値の向上を目指す。

 ソフトバンクは今回、ソフトバンクブランドで月間データ容量の上限がない新プラン「メリハリ無制限」(月額6580円)を提供することや、Y!mobileでも5Gサービスを提供することを発表したが、これらも各ブランドを強化する戦略の一環だ。一方、ソフトバンクブランドで出しているライトユーザー向けプラン「ミニフィットプラン」の処遇は、ユーザーの意見を踏まえて検討するとしている。

 ただし、通信事業でこうした値下げや投資を積極化することで、ソフトバンクの業績に影響が出る可能性もある。これに対して榛葉副社長は「当社の業績に占める通信事業の比率は、売上・利益ともに30%。ソフトバンクは多角化によって経営責任を果たしている。キャリア事業は中核としてしっかり取り組むが、他の事業もしっかりやる」と説明。具体的な影響額については明言を避けたが、非通信事業に注力してカバーする方針を示した。

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