2020年に累計登録者数が1000万人を突破した恋愛マッチングサービス「Pairs」。コロナ禍においてもユーザーは増加傾向にあり、1〜8月のアプリのダウンロード数は前年同期比2倍になった。だが運営元であるエウレカの金田悠希さん(執行役員VP of Product)によれば、新型コロナウイルスの感染が拡大し始めた当初は「ビジネスにとっての危機になるのではないかと社内でも不安感があった」という。
なぜコロナ禍でもユーザーが増えたのか、金田さんに聞いた。
Pairsは、年齢や趣味、職業といった条件で異性を検索。気になった人に「いいね!」を送って、相手からも「いいね!」があればマッチングが成立し、メッセージをやりとりできるサービスだ。12月25日時点ではiOS/Android/PCブラウザに提供している。
金田さんによれば、コロナ禍以後もユーザー層や男女比には変化がないものの、サービス内でやりとりされるメッセージの数はコロナ禍以前と比べ1割ほど増えたという。
こういった傾向について金田さんは、コロナ禍によりオフラインの婚活イベントを開催しにくくなっていることが影響しているのではないかと分析する。
「コロナ禍でオンラインサービスへの注目度が高まった結果、合コンや婚活パーティーなど、これまでオフラインで異性を探していた人たちが流れてきているという仮説を立てている。一方で、コロナ禍以降はオンラインサービスの1つとしてメディアに取り上げられることが増えたため、ユーザーがPairsを知る機会が増えた可能性もある」
そんなPairsだが、新型コロナウイルス感染症が日本でも広まり始めた3〜4月ごろは、外出自粛の影響でユーザー同士が出会えず、お互いのことを知りにくくなる事態を危惧していたという。そこでいくつかの新機能を提供し、ユーザーがお互いのことを知りやすい環境を整えた。
具体的には、マッチングした相手とビデオ通話できる「ビデオデート」機能をスマートフォン向けにリリース。アプリの画面に、マッチングした相手と直接出会う際は手洗い・うがいを徹底し、“咳エチケット”を守るよう促すメッセージも表示するようにした。
ビデオデート機能はユーザーからの要望や反応も大きいといい、リリース後もアップデートを重ねている。具体的には「肌をきれいに見せたい」「まだ親しくない人に部屋の中を見られたくない」といった声があり、肌をきれいに見せる「ナチュラルスキン」機能や、バーチャル背景機能を追加した。
金田さんは「データを取っていないため、これらの施策がユーザー獲得につながったと断言はできないが、状況に合わせて必要な機能を提供してきたと考えている」としている。
一方で、コロナ禍を経て再確認した課題もあるという。
「婚活マッチングアプリ市場では今後、コロナ禍もあってオンラインの価値がどんどん上がっていく。一方で、異性との出会いにおいては、最終的に現実で会うことは変わりない。最終的な出会いが安全か、楽しくデートできるかといったことの重要度が上がっていく」
この課題に対し、Pairsでは本人確認の仕組みを整え、アプリ自体の信頼性を強化することで対応しているという。第一歩として、生体認証サービスを提供するLiquid(東京都千代田区)のeKYC(オンライン本人確認)システムを10月に導入。
従来はユーザーがアップロードした顔写真と免許証などの写真付き書類だけで本人確認していたが、新たに表情筋の動きや書類の厚みなどを確認するステップを設け、偽の個人情報を使った登録を抑止している。
今後もいくつかの施策を検討中といい、利用に当たっての安心感を高めることで、まだマッチングアプリに抵抗があるユーザーの取り込みにもつなげる方針だ。
「Pairsに限らずオンラインでの出会いは便利だが、最終的に現実世界で出会う際に怖い思いをしたり、だまされたりする可能性は常にある。安心感を可視化する取り組みは、Pairsにとっても中長期的に大事になっていくと思う」
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