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» 2020年12月31日 07時00分 公開

NHKの公式note開始は“成り行きの未来”との決別になるか (1/5)

ネットの普及などで新聞・テレビの時代の岐路に立たされている中、NHKは12月、「note」に公式アカウントを開設。元NHK記者が内部文書や現役職員への取材から公共メディアの未来を読み解く。

[島契嗣,ITmedia]

 メディアを取り巻く環境が激変している。2大王者として長く君臨した新聞・テレビは時代の岐路に立たされている。情報を受け取る生活者の意識も変化している。「ニュースにお金は払いたくない」「情報摂取は全てスマホ経由」。そんな若者であふれている。

 そうした中で、2020年12月14日、NHKがnoteに1本の記事を投稿した。

 「NHK公式『取材ノート』、はじめます」

 NHKが外部プラットフォームに新たな伝達手段を求めた。記者の取材過程の情報を書き留める「取材ノート」と「note」をかけたもので、これまで“死蔵”していたストーリーやノウハウをつづるという。

 この動きにメディア関係者の注目が集まった。「NHKは何を考えているのか」。折しも、NHKは経営計画の中で、放送だけでなくインターネット配信なども活用して情報を届ける「公共メディア」への進化を掲げている。

photo 「取材ノート」の初回記事

 メディアの未来を考えるときに、いつも思い出す言葉がある。トヨタの豊田章男社長は2018年、こう宣言した。

 「トヨタを『自動車をつくる会社』から『モビリティ・カンパニー』(移動サービス会社)に転換することを決断した。従来の延長線上にある成り行きの未来と決別し、自分たちの手で切り開く未来を選択したことを意味する」

 2019年まで記者としてNHKの「中の人」だった筆者が今回、「NHK取材ノート編集部」の5人に、noteで取り組みを始めた意図を聞いた。

島 契嗣(しま・けいし)

大阪府出身。読売新聞大阪本社を経て、2013年NHK入局。報道局社会部で警視庁、警察庁などを担当。贈収賄事件やネット犯罪のほか、選挙や政治資金、災害を取材。警察庁による古物営業法改正に係るメルカリへの取材をきっかけに、19年パブリックアフェアーズ専門のコンサルティングファーム「マカイラ」入社。主にデジタル市場や次世代メディア、スタートアップ企業の案件を担当している。

Twitter:@shima_keishi

note:https://note.com/kcisland

(編集:樋口隆充)


「NHK取材ノート編集部」はどんな人の集まりか

 NHK取材ノート編集部は、報道局ネットワーク報道部の中にある。デスク3人(40〜50代)、記者2人(20〜30代)の計5人体制だ。

 局内外との調整が簡単ではないNHKにおいて「公式note」による新たな伝達手段を考え、実際に立ち上げたデスク3人は、これからもNHKのデジタル戦略などをけん引していく中心的な存在になると思われる。

 ここで彼らのバックグラウンドについて簡単に触れておきたい。このデスク3人は、NHKのあるべき姿を内部向けに訴えた文書「NHKのためのイノベーションリポート」を執筆したメンバーでもある。

 「ネットワーク報道部」は、社会部ネットワーク(東京と地方局をつなぐ窓口)とネット報道部(Web記事などを手掛けるデジタル部署)の2つの部署を統合してできた部署だ。

 この統合が、地方に取り組みを浸透させたり、デジタルシフトを進めたりする上で強みを発揮している。

 デスクは熊田安伸さん、足立義則さん、松枝一靖さんの3人。記者は小倉真依さんと杉本宙矢さんの2人だ。

 熊田デスクは社会部出身で、これまで多くの調査報道を手掛け、後進の育成にも取り組んでいる。代表作のNHKスペシャルに「追跡 復興予算19兆円」「わが子へ〜大川小遺族の2年」などがある。NHKのWeb記事「政治マガジン」を成功させた一人である。

 足立デスクは、社会部と科学・文化部を経て、報道局にソーシャルリスニングチーム「SoLT」(ソルト)を立ち上げた功績で、NHK内外で知られる。SoLTはSNS上の膨大な投稿を分析し、災害や事件・事故の報道につなげている。

 松枝デスクも社会部出身で、警視庁担当デスクなどを経験した。記者時代から特に遊軍的な企画取材を得意とした。就活生たちに多く読まれるNHKの「就活応援ニュースゼミ」の編集長も務める。

 小倉記者は大阪府警担当、東京都庁担当などを経てネットワーク報道部へ。心と体の性の違いを抱える子どもをテーマに取材したWeb記事「いいの、いいの」は大きな反響を読んだ。

 杉本記者は熊本放送局を経てネットワーク報道部へ。裁判記録を活用したことでも画期的な地方発の番組「日本一長く服役した男」の取材に携わった。

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