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» 2021年01月13日 07時00分 公開

AWSが生まれたのは、Amazonが経費削減のためにSunのサーバからHP/Linuxサーバへ切り替えたことがきっかけ 当時の社員が振り返る (2/2)

[新野淳一,ITmedia]
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HP/Linuxへの置き換えに失敗すれば、Webサイトは落ち会社は死ぬ

HP/Linuxへの移行作業のあいだ製品開発は止まり、1年以上にわたり新機能が凍結された。膨大なバックログを抱えたものの、Linuxへの移行が完了するまで何も提供できなかった。私は、ある全員参加型の会議で、 VPの一人が蛇がネズミを無理やり飲み込もうとしている画像をちらりと見せたのを覚えている。

手持ち資金が燃え尽きるのを遅らせるために販売価格を引き上げなければならなかったことと、収益の伸びが鈍化したことなどが重なった。私たちの残り資金と残り時間はなくなろうとしており、あと数四半期以内には倒産するところまで追い込まれた。

Linuxへの移行を開始すると、もう後戻りはできない。全員でコードベースのリファクタリング、サーバの交換、カットオーバーの準備をした。うまくいけば、インフラコストは80%以上削減できる。しかしもし失敗すればWebサイトは落ち、会社は死ぬことになる。

余ったサーバ能力を他社に貸し出したらどうだろう?

私たちはついに移行を完了させた、時間通りに、滞りなく。これはエンジニアリングチーム全体にとって大きな成果だった。サイトは何の混乱もなく稼働していた。設備投資は一晩で大幅に削減された。そして、私たちは突然、無限に拡張可能なインフラストラクチャを手に入れたのだ。

すると、さらに興味深いことが起こる。小売業として私たちは、毎年11月と12月にはトラフィックと売り上げが跳ね上がるという、季節ごとの変動にさらされている。そこでJeffは考え始めた……私たちには年間46週分の余ったサーバ能力がある。これを他社に貸し出したらどうだろう?

同じくこの頃、Jeffは社内のチームのデカップリングについても興味を持ち始め、他のチームからの許可なく別のチームがビルドできるようにした。この疎結合モデルを可能にするために必要なアーキテクチャの変更が、AWSにとってのAPIの基礎となった。

これらがAWSの基本的な考え方となったのだ。私が覚えているのは、Jeffが全員参加の会議において、(AWSのようなクラウドを)電力網の文脈で考えていたことである。1900年代、ビジネスを始めるには自力で電力をまかなう必要があったが、2000年代にビジネスをはじめるのになぜ自社でデータセンターを保有しなければならないのかと。

善き危機を無駄にする事なかれ

AWSが存在しなかったとしてしもクラウドは登場していただろう(テスラが存在しなくとも電気自動車が登場したように)。しかしどれだけその時期が遅れ、機会損失になっただろうか? AWSの登場で起業のコストは劇的に下がり、イノベーションの爆発が起こり、現代的なベンチャーキャピタルのエコシステムが生まれたのだ。

Amazonは2000年から2003年にかけて倒産の瀬戸際まで追い詰められた。しかしこの危機なしには、完全に新しいアーキテクチャに移行するという難しい決断はできなかったのではないだろうか。そしてこの移行なしにAWSは生まれなかったのではないだろうか。善き危機を無駄にする事なかれ!

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